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スタンレー・ミルグラム

仮説として「スモール・ワールド問題」を打ち出した、アメリカの社会心理学者。1960年代に手紙を使った実験を行い、1967年にその結果を示した『The small world problem』を発表した。「平均5.5人が仲介によって手紙が届いた」ことを報告したが、有名なフレーズである「世界中の人々 が6人(5人の仲介者)でつながっている」というような主張はしていない。「六次の隔たり」という言葉自体を作り出したのは、脚本家のジョン・グエア(John Guare)。

実験は、カンザス州とネブラスカ州の住人からランダムに抽出した300人に、正確に住所がわかっていない「マサチューセッツ州ボストンの受取人」へ各自の知り合いを通して手紙を届けるよう指示し、何人の仲介者を必要としたかを調べたもの。

その後もスモール・ワールド問題は社会学的推測のみに留まらず、さまざまなポップカルチャーに浸透している。また、今日のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)にもつながった発想であり、アメリカで1997年に開設された「SixDegrees.com」(現在は閉鎖)や、日本で2004年に開設された「GREE」の語源にもなっている。

スティーヴン・ストロガッツ

カオス、複雑系、同期現象研究の第一人者。ダンカン・ワッツとの共著論文で「スモール・ワールド」理論を提唱、社会ネットワーク論の領域でも話題を呼んだ。ホタルやコオロギの共鳴に関する研究がテーマであったが、あるとき同じくこの問題にあたっていたワッツに提案され、スモール・ワールド問題を通してこれに取り組むようになった。

著書『SYNC』では彼の本来のテーマであったホタルの共鳴をはじめ、脳波、体内時計、神経系、レーザー、超伝導、月の公転、小惑星帯など、様々な自然現象に見られる「同期」をわかりやすく提示している。

「ホタルがいっせいに光るのを見たことがあった。
いや、ただそう思っただけのことなのかもしれない。
私は、自分の目がどうしても信じられなかった。
というのも、そんな現象は、あらゆる自然法則に反することだからだ」

これは『SYNC』冒頭からの引用である。

同期発光ができる珍種のホタルの生息は知られていたが、こうした逸話のような話は科学者に真剣に受け止められることはなかった。その後、同時発光のメカニズムに生物学的な観点から答えを出そうとした学者は多くおり、有力な説もいくつか出ているが、情報処理の仕組みという観点からこの問題に取り組んだ学者はストロガッツらが初めてであった。

ダンカン・ワッツ

コロンビア大学社会学部准教授。オーストラリア生まれ。「ネットワーク科学の革命児」と称される。日本では単行本『スモール・ワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』が有名。スティーヴン・ストロガッツは、コーネル大学の大学院でワッツの博士課程の指導教官だった。

ワッツはスモール・ワールド問題を共鳴の理論に組み込むことを考えたが、調べてみると、ミルグラムらの先行研究はスモール・ワールドゆえの効果が現実に存在する証拠にはなっていたものの、その証明と呼ぶには程遠いものであることがわかった。そこで、ワッツとストロガッツは研究の焦点をスモール・ワールド問題に絞った。

規則的なネットワークには実社会のネットワークに見られるのと同じような集団や仲間の集まりが生じるが、スモール・ワールドの特質はない。ある地点から別の地点へ行くのに、あまりにも多くの段階を要してしまうのである。逆に、完全なランダム・ネットワークはスモール・ワールドを生み出すが、クラスターは存在せず、友人の集団やコミュニティが一切存在しない世界になってしまう。この問題を証明することは、スモール・ワールド・ネットワークという新たな領域を証明するということだった。

この観点から書き上げたワッツとストロガッツの論文が口火となり、科学の多くの分野でさらにスモール・ワールド問題が扱われるようになった。

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