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核融合研取材(2006年2月23日)

施設の見学後、昼食を食べたり、図書館を見たりして過ごしてから、13時30分ころから長山先生のお話を聴きました。長山先生が研究されていることは、トカマク内部のプラズマの崩壊現象と、プラズマの電子温度計測です。トカマク(tokamak)というのは、環状磁場によってプラズマを閉じ込める装置のことで、もともと露語です。高温プラズマを閉じ込めることで、核融合が起きやすくなると考えられていて、プラズマの閉じ込めこそが、核融合を起こすのに重要になっています。

LHDや球状トカマクなど、装置が幾何学的にいろいろな形状をしているのは、この、プラズマの有効な閉じ込めのための工夫です。トカマクの中のプラスマは、ある条件の下では、崩壊することが知られています。したがって、プラズマが崩壊する仕組みを知らなければ、核融合炉の実現はむずかしいというわけです。

長山好夫教授は、まさにそこを研究しています。プラズマの崩壊現象を研究するには、パラメータをいろいろかえてみて、実際にプラズマを崩壊させなくてはいけません。プラズマが崩壊すると、装置が大きな音を立てて、装置内の膜が剥がれるのだそうです。お話を聴いていて、長山先生の研究はまさしく「失敗学」だな、と感じました。そして、この研究が将来的な核融合炉の設計に反映されることになります。

長山先生は、プラズマの崩壊実験は、装置のメンテナンスなどのコストが大きくて、なかなかさせてもらえない、と嘆いていました。また、どうしても研究報告がネガティブなものになりがちだと言っていました(それでも、プラズマの物理としての学問はできる、とポジティブな姿勢をお持ちでした)。

立花先生もおっしゃいましたが、こういう研究をもっとおこなうべきだと感じました。そうでなければ、将来的な核融合炉の危機管理ができなくなってしまいます。

長山教授のお話をひととおり聴いてから、シンポジウムでの発表内容の修正をしていきました。長山先生は、パワーポイントの資料を大変丁寧に練られる方で、とても感心させられました。しかし、扱っている内容がむずかしく、説明の文も長くなりがちなところがありました。また、プラズマの専門家しかわからないような、玄人向けの話題もいくつか見受けられました。

そのあたりの点を、立花さんや僕たちゼミ生がつついてみて、シンポジウムのコンセプトに見合う、「見て」「わかる」内容になるように、長山先生にお願いしてきました。当日の発表を、僕たちも楽しみにしたいと思います。

その後、所長の本島修さんにお会いして、僕たちがやっているゼミの活動などについて、お話をしてきました。本島先生は、今年中にも核融合を起こす実験に取り組めるだろう、とおっしゃっていました。核融合研のこれからの動向に注目したいと思います。

午後6時くらいに核融合研を後にしました。

今回の取材での収穫は、一つの国家的な大プロジェクトの現場を目の当たりにした、ということです。いまだ、開発途中で先が良く見えない核融合炉ですが、それだからこその面白みや、やり甲斐があると感じました。

文責 岩崎陽平

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