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「もう一つの宇宙=脳の神秘が見えてきた」「フェムト秒レーザーがとらえる脳の秘密」 河西 春郎

まえがき

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 河西教授は、脳の高次機能を、神経細胞の「スパイン」という部分に着目して研究しています。

 スパインの特徴として、高等動物でよく発達していること、多形であること、大脳や小脳で発達していること、精神遅滞の人のスパインが異常な形をとること、などが知られており、何か重要な役割を担っているに違いないと昔から注目されてきましたが、その詳細は謎につつまれたままでした。

 活動している状態での生きたスパインを一つ一つ観察することが不可能だったためです。

 この問題を解決すべく開発されたのが、河西教授の2光子励起顕微鏡です。

 これにより、スパインの記憶素子としての一面が見えてきました。人間の長期記憶、短期記憶がどう生じるか、という問題が解明されつつあるのです。

 今回の講演の最大のポイントは、「スパイン」と「2光子励起顕微鏡」の2点に集約されます。 そのため、以下の用語集には、生物学的用語とともに、工学的な用語も含まれています。

用語集

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|神経細胞|樹状突起・軸索|ニューロン|
|シナプス|神経伝達物質|スパイン|スパインのネック|
|グルタミン酸・グルタミン酸受容体|AMPA型受容体|
|励起|海馬|2光子励起顕微鏡|長期増強|
神経細胞(しんけいさいぼう) (担当:野村)

脳の中では、感覚細胞で受容した刺激を、電気的な信号として、中枢神経系に送り込むが、神経細胞は、この"送る"という重要な役割を担っている。高速に、遠く離れた特定の神経細胞に電気信号を正確に伝える。そのため、極端に細長い形をしている。
樹状突起・軸索(じゅじょうとっき・じくさく) (担当:野村)

神経細胞は、細胞体とそこから細長くのびた突起である軸索からなる。核をもつ細胞体には、樹状突起と呼ばれる短い突起がある。電気信号は、この樹状突起から入力され、軸索から出力される。軸索は、髄鞘や神経鞘で周囲が覆われているものが多い。
ニューロン(にゅーろん) (担当:野村)

神経細胞のこのような特徴的な構造を、情報の入力・出力を行う一つの機能単位としてニューロンと呼ぶこともある。ヒトの脳には、10の11乗以上のニューロンが存在する。
シナプス(しなぷす) (担当:野村)

軸索の末端(軸索終末)が他の神経細胞と結合して、神経回路網を作る時の結合部位をシナプスという。ニューロンを通るシグナルはシナプスを介して伝えられる。シナプスの間には、少しだけ隙間があり、前細胞と後細胞に分けられている。
神経伝達物質(しんけいでんたつぶっしつ) (担当:野村)

シナプスの前部に存在するシナプス小胞中には、小型のシグナル分子が蓄積されている。このうち、興奮を伝えるものを神経伝達物質という。後部には、神経伝達物質の受容体がある。シナプスの隙間に電位変化があると、神経伝達物質がシナプス間隙に放出される。
スパイン(すぱいん) (担当:野村)

神経細胞のシナプス結合には、軸索終末の方の前部と、樹状突起の方の後部がある。後者の棘状の部位を、スパインとよぶ。スパインは、形が多様で、高等動物に特異的、さらに大脳皮質・大脳基底核・小脳プルキンエ細胞の3つで特によく発達していることが知られている。
スパインのネック(すぱいんのねっく) (担当:平山)

スパインの頭部(体積0.004〜0.56 μm³)と樹状突起の幹部(直径0.04〜0.5 μm、長さ0.08〜2 μm)をつなぐ部分。
グルタミン酸・グルタミン酸受容体(ぐるたみんさん・ぐるたみんさんじゅようたい) (担当:平山)

海馬では、アミノ酸の一種グルタミン酸(Glu)が、神経伝達物質として、興奮性の神経伝達に使われている。
AMPA型受容体(アンパがたじゅようたい) (担当:平山)

グルタミン酸受容体の1つで、神経伝達物質としてのグルタミン酸を受容する。AMPA型受容体はNaイオンとKイオンを透過させ、速いシナプス伝達を担っている。
励起(れいき) (担当:平山)

原子、分子などが光や放射線などによってエネルギーの最も低い安定した状態から、より高いエネルギー状態に移行すること。
海馬(かいば) (担当:平山)

大脳の中で、特に記憶の獲得・空間学習などの機能を担っている分野。特に,数時間から数週間程度の短期記憶を保持する場所だと考えられている。海馬の回路は他の領域よりも比較的単純であるため、研究によく用いられる。
2光子励起顕微鏡(にこうしれいきけんびきょう) (担当:平山)

超短パルスレーザーという特殊な光を使うことで、顕微鏡の焦点部分だけで蛍光物質を蛍光させることができる顕微鏡のこと。通常の光では、観察する部分以外でも圧倒的に光が吸収されて暖まってしまうが、超短パルスレーザーは観察したい部分でしか光が吸収されないため標本へのダメージが少なく、観察しやすい。
長期増強(ちょうきぞうきょう) (担当:平山)

ある神経細胞に高頻度で反復刺激を与えるとその神経細胞の刺激に対するシナプス応答が増強され大きくなり、それが長期間にわたって観察されること。海馬をはじめ大脳皮質の各所に見られ、学習・記憶の細胞機構ではないかと考えられている。LTPともよばれる。
興奮性と抑制性(こうふんせいとよくせいせい) (担当:平井)

シナプスは、前細胞が発火すると後細胞が発火しにくくなる場合、興奮性と呼ばれる。逆に、前細胞が発火すると後細胞が発火しにくくなる場合、抑制性と呼ばれる。
受容体(じゅようたい) (担当:平井)

細胞の表面にあって、ある種の物質のみを感知し、信号として受けとるタンパク質のこと。どんな種類の物質に反応して何を起こすかは、受容体の種類によって異なる。化学シナプスでは、後細胞(神経伝達を受ける側)にあって、神経伝達物質に反応する。

さらに知りたい方へ (担当:野村)

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役に立つリンク

* 脳の世界:京都大学霊長類研究所
おすすめする本

* THE CELL  (Newton Press)
* 生物学 石川統(東京化学同人)
* 生物学入門 石川統 (東京化学同人)


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