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家先生の講演内容

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家 正則
国立天文台教授・東京大学

すばる望遠鏡(担当:野村)

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「宇宙の果てをみたい」

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 天文学者、いやヒトがずっと持ち続けてきた夢。もっと遠くを見たい、もっと暗いものをみたい、そして宇宙の謎を解きたい、これが原動力となって、様々な望遠鏡が開発されてきた。遠くを見るということは、およそ140億年前の生まれたばかりの宇宙を見るということである。宇宙が膨張を始めた最初はどんなものだったのだろうか。宇宙はどのように進化してきたか。さらに、他の星に文明を持つ星があるのか、など、一昔前ではSFの世界でしか考えられなかったようなことが、今では次々と、真面目な研究対象として選ばれている。

もっと大きい望遠鏡を

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 遠く暗いものを見るには、高い集光力をもった大きな鏡の望遠鏡を作ることが必要である。こうして、巨大望遠鏡時代が到来し、世界中で、巨大な望遠鏡を作ろうとする気運が高まった。

 1976年に、旧ソビエト連邦で完成したゼレンチュクス天文台の6m望遠鏡。1979年に、薄い鏡を始めて使ったマウナケア山頂のUKIRTと、鏡を組み合わせて作ったアリゾナ州のMMT。1989年には、能動光学を利用したNTTが完成する。

 こうした望遠鏡の開発に伴う技術革新の中、1991年、日本でも、口径8mのすばる望遠鏡の建設が始められた。同じく口径8mの、ヨーロッパのVLT、アメリカのジェミニとの競争が始まったのである。

すばるができるまで

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すばる望遠鏡

 はじめに、すばる望遠鏡がどういうものか書いてみる。

すばるの場所

 まず場所だが、ハワイ島のマウナケア山頂にある。海抜4205m。晴天率が高い、夜空が暗い、気温の変化が少ない、空の透明度が高い、など、天文観測する上で必要な立地条件を満たしている。

 しかし、マウナケア山頂は気圧が地表の3分の2というほど、空気がうすく、観測する人にとっては、眠気や頭痛に悩まされるという厳しい場所でもある。

 そこで、スタッフや研究室、観測のデータ解析の機械などは、全てヒロ市内のハワイ大学キャンパスに本部の建物が建てられた。そこに、望遠鏡の保守・運用にあたるスタッフの研究室から観測のデータ解析に使うコンピュータまで、全てがそろっている。

すばるネットワーク

 すばるの観測データのネットは次のようにつながっている。

 マウナケア山頂のすばる望遠鏡は、環境データ・観測データを、光ファイバーを利用して、リアルタイムでヒロ市内にある、すばる山麓研究棟に送る。この研究棟は、東京都武蔵野市三鷹にある、すばる解析研究棟と、太平洋ネットワークでつながっていて、圧縮画像やデータベース情報などのやりとりがされる。そして、今度は、その解析研究棟と各大学・各研究所が、学術情報をやりとりしているのである。

すばるの本体

 本体は、主鏡、アクチュエーター、副鏡、第3鏡ユニット、第3鏡スパイダーなど、様々な部品からできている。

 驚くのは、総体500トンを越える望遠鏡を、一人で押して動かせることだ。摩擦が限りなくゼロに近いという。鏡と機械と駆動制御が組み合わさった、超ハイテクな望遠鏡なのである。

 さて、これらの部品作りには、それぞれに大変な苦労があったのだが、ここでは、一番時間のかかった鏡に絞って、その工程を見てみたい。

すばるの鏡

 大量の情報を集めるには、宇宙からやってくる光を、どれだけ微弱でも集められるような高精度の鏡が何よりも必要だ。

 すばる望遠鏡の反射鏡は、直径8.2m。ガラスの厚さは、たったの20cm。完成した当時、世界最大・最高精度の望遠鏡だった。

 鮮明な像を得るには、鏡面をその10分の1の精度に保たなければいけないという。可視光を観測する鏡には、その10分の1の波長、40ナノメートルから80ナノメートル位を区別する精度が必要とされるのだ。

 製作コストを抑えるためにも、制御可能な大きさにするためにも、ガラスの軽量化が最重要課題である。そのために考えられた方法は、とにかく薄くする、もしくは、ガラスの中身をくりぬく、という方法である。

 薄くすると、ふにゃふにゃになって、ガラスが変形しやすくなる。そこで、中身をくりぬくメニスカス法がとられた。

 また、鏡の材料にもこだわっている。気温が変化しても全く伸び縮みしないような特殊な素材でできている。星の像は、ほんのわずかの変形でも、ぼやけが大きくなるのだ。

> > 最初の難関、ガラス製作



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