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この特集について

 横井助教授らが開発を進めているのは、筋電義手と呼ばれる新しいタイプの義手です。
 筋細胞で発生する電位をセンサーで読みとり、そこから得られた情報を処理することによって義手を動かします。
 番組の中では、横井研の実験協力者で、右手を工場の事故で失った笠井さんが登場します。笠井さんがロボットハンドで持った徳利から、ご主人の握るお猪口にお酒を注ぐシーンは特に印象的です。
 私たち立花ゼミ生は、近々、横井研の実験で上京される笠井さんに取材する予定です。
 その模様はこの特集内で追って詳しくお伝えしますが、それに先立ち立花隆の横井研インタビューからいくつかの場面を抜粋してお届けします。

ヒョイとできるようになる

立花アメリカで、四肢麻痺の人の脳に電極を埋め込んで、コンピュータを使って様々なことをさせる研究を取材しました。
私は、相当訓練を積まなければ、コンピュータをうまく操作できないだろうと思った。
だけど、その研究をやっているドナヒューさんに訊いたら、そうではない、というんです。
ドナヒューさんがなんて言ったかというと、
 「子どものとき、あなた自転車に乗れるようになったときのこと覚えているでしょう? はじめは一生懸命にああでもないこうでもないといろいろやっていたら、 あるときヒョイとできるようになっちゃっただろう。 要するにそれと同じなんだよ」
というんです。
患者本人に訊いても、努力を積み重ねたんじゃなくて、あるときヒョイとできちゃったって言ってました。
横井ほんとにその通りだと思います。

多機能ロボットハンド

横井いまは手に限定されていますが、義手の部分がパワーショベルになったりするかもしれません。
健常者の機能アップのための機械が出てくるんじゃないかと思っています。
タコやイカのように何本も手を出して、それを脳がうまく捉えられるかは疑問ですが、触覚をつければうまくできるんじゃないかと思っています。
立花そうすると、たとえば大地震で、瓦礫の山になったときに、そういう腕を持った人がとんでもない力を発揮して、救助活動をする、そういう時代が目の前に来ている。
横井そう思いますね。
人間の力を倍加させる「倍力装置」とともに、機能、自由度の拡張も可能になるのは、もう目の前だと思います。

あと50年!人間の手と見まがうほどの義手が登場する

横井義手の技術に関しては、おそらくここ50年くらいで、ほんとに人間の手と見まがうほどのレベルにまで達すると思います。
モーターも小型化され、より強力になるでしょう。
人工皮膚も発展して、1ミリ平方メートルあたり100個以上のセンサーがついて、温度も痛覚も振動も圧覚(圧力を感じる感覚)も十分取れるようなものが出てくると思いますね。
さらに再生医療がこの技術に代わる技術としてその後50年から100年の間に発展してくる。
私はそう予想しています。

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