河西教授取材(2006年2月14日)
今回は、自然科学研究機構の生理学研究所で、神経生理学を専門にしていらっしゃる河西春郎教授の取材に同行してきました。河西先生の講演はたった25分ですが、今回のシンポジウムでも目玉になるノーベル賞級の研究だ、とにかくすごいんだ、と立花さんがおっしゃっていました。これは見るしかない。世界で一番暇な私はまた同行してきました。
河西先生の研究室は、3週間前に引っ越したばかりらしく、取材場所は愛知ではなく本郷の医学部でした。この前岡崎まで片道2時間半かけて行った私は、やっぱり近いっていい、と猛烈に感じました。
最初に、講演内容がどういう展開になるのか、リハーサルという形で話していただきました。先生が研究されているのは、脳です。その中で一番重要でやたら小さい部分。シナプスの“スパイン”という部分です。スパインは脳のなかの半導体、もう少しいえば機能チップのようなもので、一番大事な部分です。しかしその詳細は謎だらけ。
まずは、それがどこにあるのか、図で見ました。Natureに先生の研究が載ったときの図で、分かりやすい。前日に、立花事務所から、河西先生の研究についての大量の資料をもらっていたので、スパインがどこか、というのは分かっていたものの、3次元の図を視覚的に見ると、当たり前のことが見えてなかったことに気がつきました。神経細胞がいっぱいあることとか、スパインが棘というのはこういうことか、など。こういうのを見ると、まさに「百聞は一見にしかず」。一挙に視覚的な情報を与えてくれる図の力って大きいと思います。
ニュートンにもNatureにも紹介された河西先生の研究の何がすごいのかといえば、スパインがもぞもぞ動いているのを見えるようにしたこと。しかも光を使って。それが2光子励起顕微鏡です。
先ほど、図の力って大きいと書きましたが、これも同じで、動いてるのを見て初めて、この動きが何か機能と関係してるのでは、と気づいたりします。生きたスパインを見えるようにしたことは、それ自体の発見よりも、それがきっかけで見えてくる様々な可能性を提示した、という意味で大発見なんだろうと思います。ただ、スパインの研究は非常に困難だといいます。しかも、河西先生は一つのスパインだけに注目して研究しています。技術的な問題が大きい。今でも、これを研究対象に選ぶ研究者は世界で数人(!)なんだとか。
一つのスパインがナノよりも小さいサイズであることを考えれば、それを観察する困難さがなんとなく分かります。最も重要なのは手先の器用さだということです。しかしスパインが重要であることは誰もが認めていて、その研究は無限の可能性を秘めています。河西先生曰く「それがわかったら不思議はなくなっちゃうくらいなんだ。」とか。
最後に、実験室を見学しました。始めに見たのは、長短パルスレーザーを3方向からあてている器具。器具の量と、精密に計算された立ち位置に圧倒されました。あとは、マウスの脳に刺激を与えるときに使う器具などを見てまわりました。実際、実験室を見ると、生き物がいないためか、生物系のいわゆる泥臭さがなく、生物系というよりは、工学系に近い感じがしました。
この先生は医学部の先生ですが、医工連携は相当すすんでいる、どころか、もう当たり前のことのようです。
取材中、立花さんが、NHKにこの研究室を取り上げさせたい、というようなことをおっしゃっていました。立花さんは相当行動が早いので、もしかしたら、今年中にテレビで見れるようになるかもしれません。今回取材に同行して、25分じゃ足りないと痛切に感じたので、テレビで取り上げられるといいなぁ。
文責 野村直子
準備中