SCImates α2は機能を停止しています。

太陽と地球の事情は違う?

地上に小さな太陽ができたら万々歳です。燃料となる水素を投入したら勝手に発電してくれるなんて、最高です。

ところが、実際の太陽と地上では勝手が違います。


図.1 太陽

太陽があのまんまるな形状を保てているのは、巨大で、それ自体の重さ(自重)がじゅうぶんあるからです。

質量のある物質同士は、りんごが地球に引き寄せられ(落ち)るのと同じ理屈で引き合います。太陽を構成するさまざまな粒子は、それぞれが引き合ってまとまりを保てている、というわけです。


図.2 プラズマ実験で観測されるプラズマ
quoted from LHDのプラズマ画像

しかし、地上に太陽を作ろうとすると大きさが極めて小さくなります。すると、プラズマ状態になる部分の重さが足りず、じゅうぶんに引き合わなくてかたちを自分で保てないのです。

このページでは太陽より実験のプラズマのほうが大きく映っていますが、正しい縮尺で実験プラズマを映したら点にもなりませんので、ご愛嬌ということでご勘弁ください。

さて、そこで、核融合による発電を目指す場合、二つのやり方が考えられます。

磁気閉じ込め核融合

一つは、プラズマを何らかの方法で安定させ、核融合反応が自然に起きる連鎖を長時間にわたって起こすやり方。後で説明しているように磁力でプラズマを閉じ込めるため「磁気閉じ込め核融合」と呼ばれています。

磁気閉じ込め核融合は、太陽で起きているのとほぼ同じ核融合を目指します。このため、磁気閉じ込め核融合炉の様子を観測すると逆に太陽で何が起きているのかが分かります。第一部、加藤隆子さんの講演「地球の太陽から宇宙を探る」で詳しい話があるでしょう。

慣性閉じ込め核融合

もう一つは、非常に高密度のプラズマを作り、ごく短時間プラズマ状態を保持して反応させるやり方です。レーザーで高密度のプラズマを作るため「レーザー(慣性閉じ込め)核融合」と呼ばれています。なお、こちらは融合炉が太陽を模しているわけではありません。一瞬で反応が終わってしまうからです。太陽が爆発的に反応を起こして一瞬で消えてしまっては困りますね。

日本では大阪大学の高部英明さんらをはじめとするメンバーが研究にあたっています。第二部の「レーザー核融合から新しい宇宙物理学の誕生へ」で講演していただきます。

ちょっと一息

今回のシンポジウムでは、多くの演者が核融合科学研究所(核融合研)に所属しています。その名のとおり日本における核融合の研究を先導してきた研究所で、世界最大の超伝導コイルを持つ核融合実験装置「LHD(Large Helical Device, 大型ヘリカル装置)」を保有しています。

LHDでは、さまざまな実験と改良が行われています。その意義と研究の概要については、山田弘司さんが、第二部「一億度のプラズマを閉じ込める」で講演されることと思います。LHDを使った研究過程にもドラマがあります(詳しくは後日公開される記事をご覧ください!)が、LHDの建設でも注目すべき逸話が多くあります。

建造過程では、さまざまな技術が使われました。例えば、LHDを収めた空間と外界を遮断し、安全性を確保する扉の製造には金庫メーカーが、炉内をほぼ真空に保つのに使われるターボポンプには航空機のメーカーが関わっています。

また、技術とは、決して、企業や研究所が持っている何かしら抽象的なものではありません。直径8メートルにもなるLHDを設計図との誤差2mm以内に収めて建造するには、設計図どおりに作られた部品が必要で、さらに、それらを熟練した技で接合する技術者がいるのです。

案内してくれた研究所の人が、システマティックに建てられた炉でも「最後は人頼み」と仰っていたのが印象的でした。

このページに寄せられたコメントとトラックバック

*コメント*トラックバック

準備中

寄せられたトラックバックはありません。

このページについて