SCImates α2は機能を停止しています。

先端研究現場へ行こう [基礎科学] トップへ戻る

柏キャンパス見学記

 2005年10月29日(土曜)東大柏キャンパスが一般公開され、早速見に行ってきました。柏には、新領域創成科学研究所や、宇宙線研究所、物性研究所などがあります。建物がすごくきれいで、整然と並んでいて、なんか近未来にきたような感じがしました。敷地がかなり余っているので、これからどんどん研究施設は増えていく気がします。

やっぱり柏キャンパス一般公開では、いろんな分野の最先端の研究が垣間見れたのがよかったです。初めは物性研で院生のガイドツアーに参加したのですが、意外と小学生、中学生が多かったので、専門的な話を聞くというよりは、電子顕微鏡をのぞいたり超伝導の実験を見たり、という感じでした。

鈴木研

次に新領域創成科学研究科基盤科学研究系の鈴木研をのぞきました。ここがすごく面白かったです。先生が非常に熱いかたで、専門的な話もかなりしてくださいました。大雑把にいうと、新しい宇宙輸送機の開発と空気の流れの研究(こちらの研究は、あまり話を伺えなかったのですが、早く動かすと、空気の影響が無視できなくなるので流れの研究は重要、ということらしいです。)をしているようです。

道具

この研究室にきてまず思ったのは、やっぱり研究っていうのは、研究するための道具を作ることから始まるんだな、ということです。

その道具のひとつがガンタンネル。人工衛星が火星や金星などの大気に突入するとき、超高速のため、機体のまわりの温度は相当なもの(1500度以上)になると予想されます。そのような状況を実験室で再現しようとして作られたのが、この機械です。

ガスタンクのようなものに空気がいれられており(その中は相当高い気圧になっている)、それに、細長い管がとりつけられています。こうして人工的に気流を生じさせます。(マッハ10、総温度2000度!)実際に管のさきに紙を貼り付けて、目の前で実験してもらいました。バン!っという大きい爆発音がして、紙が吹き飛ばされました。その時は破れず、ひらひらと落ちていったのですが、大抵は粉々になるらしいです。

ちなみに、来年の一般公開では、今あるガンタンネルの数倍の巨大な装置を見ることができるそうです。(人をそこの実験室から柏の葉キャンパス駅まで飛ばすことも可能なくらい強力な装置らしいです。)

あと、ガンタンネルのほかに、超高温状態を再現した機械も見ることができました。例えば、太陽の近くにいって調べようとしたとき、ものすごい高温に耐えうる素材を作る必要があります。その熱防御材の開発に使われているのです。

ほかにも2、3見せていただいたのですが、実験室で、実際の宇宙空間に近い状況をここまで再現できてしまうことが驚きでした。

次世代航空機の開発

音速を超えるようなスピードで飛ぶことができる飛行機の開発も進めていました。衝撃波が生じるため、音速を超えるスピードでの飛行は困難といわれていますが、逆にこれをうまく利用できるような飛行機の形態を考えているのです。これが可能になれば、アメリカまで2時間でいけてしまうようになるかも。

ただ、これは話を伺っただけで、実際どんな形なのかは見ることができなくて残念でした。

柔構造機体(大気圏突入機)

最後に、アルミホイルに似ていて、ぺらぺらした金色の素材でできている、傘のような変なものを見せられました。何なのかというと、新しい形の大気圏突入機なのです。 打ち上げ時は、コンパクトに収納されていて、大気圏突入時に、クラゲのように膜を開いてロケットを覆い、ひらひら減速しながら落下していきます。

1500度以上の高温でも耐えられるような耐熱繊維材でできているので、断熱タイルが不要になり、軽量化が実現できます。(耐熱繊維材の話を聞いたとき、やっぱり物性研での物質作りってほんとにどの分野でも基盤になるんだなと実感。)

スペースシャトルを打ち上げるときに一番の問題となっているのが、宇宙輸送機の再利用の問題です。特に熱防御システムの再利用の問題はかなり大きく、これができないために、今現在、スペースシャトルを打ち上げてから次のものを打ち上げるまで1年もの間があいてしまうといいます。またコスト削減の面でも、この柔構造機体の早い実現が期待されます。

⇒ここらへんの研究が現在どうなっているかに関しては、MACFTプロジェクトを見ていただくと詳しく載っています。すでに去年実験には成功しているそうです。

ところでこの研究室では、「なんとなく土星に行ってみたいな(輪っかがあるから)、じゃあどうやって実現しようか。」という話になって、この柔構造機体の研究を始めたんだそうです。研究って思いつきの部分も大きいんだなぁ。

最後に

宇宙に関してはほとんど知識がなかったので、とにかく話がおもしろかったです。こうやって物質の高速化、高エネルギー化が進むと、例えば今の5倍以上の速さになる飛行機が実現してもっと気軽に地球上のさまざまな場所に行けたり、金星や木星に着陸できる人工衛星もできるかもしれない。人間が活動できる範囲は一気に広がります。それを考えると、ここで行われている研究はものすごい可能性を秘めているとおもいます。

野村直子

このページに寄せられたコメントとトラックバック

*コメント*トラックバック

準備中

寄せられたトラックバックはありません。

このページについて