地球誕生
地球の誕生は、４６億年前。鉄や他の鉱物が固まってできた。
地球が誕生する時に最も奇跡的だったのは、水の海ができたことだ。
太陽との距離のバランス、太陽からの放射線の熱のバランス、宇宙線の強さのバランス、この３バランスが適度に揃うことで、水が海を作ることができた。
ところで、水ほど面白く、不思議な物質はない。水は、0度から１００度付近で、気体、液体、固体という３つの相を見せる。地球表面温度が０度から１００度の間にあり、この不思議な物質が液体の水として存在し、海を形成したこと、これが全てだった。
これがどれだけ特異な現象なのかは、他の惑星を見ればすぐに分かる。
火星という極寒の地では、氷はあるが水はない。金星は、二酸化炭素ガスによる温暖化のため、300度から500度という高温で、もちろん水は存在しない。地球はたまたま火星と金星の間にできて、水ができたのだ。
もう一つ、海が形成された理由には、火星に比べ引力が大きく、蒸気が逃げなかったということもある。
火星の引力は地球の半分以下で、かつて存在した海も宇宙空間に逃げてしまったのだ。
生命誕生
３０数億年前。ここでようやく、無機質な地球に、生命が誕生する。
ミュラーの実験という有名な実験がある。原始地球の大気組成であっただろう水素、メタン、アンモニアを水蒸気内で放電すると、アミノ酸ができたという実験である。現実にも同じようなことが起きただろう。こうしてアミノ酸が豊富な海（海全体がこうなったかは不明だが、少なくとも一部は）、いわばアミノ酸スープの中で、自己触媒機能、自己複製機能を兼ね備えた生命が誕生したのだ。
生命の起源説にかんしてはいくつもの論文がでているが、どれも完全に説明できたものはない。
シアノバクテリア誕生
３０億年前に出現したといわれる生命史上最強の革命者シアノバクテリアは、２０億年前前後になると、急激にその数を増した。
シアノバクテリアの祖先は光合成細菌だ。紅色光合成細菌と、緑色硫黄光合成細菌の２つの細胞が融合してできたといわれている。どっちかがどっちかを食ったんだという説と、お互いが合体したんだという説があるが、定かではない。
今でも、ニュージーランドでは、湧き口８０度の火山のそばの温泉の岩が、光合成細菌はもちろん、シアノバクテリアにも覆われている。これを見ると、太古の地球の姿が浮かび上がってくる。岩石だらけの地球表面。これを覆っていたのは、シアノバクテリアだった。
シアノバクテリアは、ストロマトライトという構造物をつくる。ストロマトライトは、大量のシアノバクテリアが堆積物の表面と絡み合い、流れてきた微細な粒子をとらえ、徐々に拡大してできたものだ。ストロマトライトに含まれるシアノバクテリアの化石を見れば、どんなシアノバクテリアが誕生していたかが分かる。
一番最初のシアノバクテリアは、現生のノストック属と形状が似ていると推測されている。その後、多様なシアノバクテリアが現れるが、ここでは、ノストック属の一つ、Anabaena sp.PCC 7120に注目したい。ノストック属に似た化石は、細胞分化が見られた化石では世界最古のものだ。シアノバクテリアが引き起こした酸素革命は、それ自身を進化させる要因ともなったのである。この分化した細胞については、その分化の仕組みが大森研で明らかにされつつある。これについては後で詳しく述べる。
シアノバクテリアは水を分解して酸素を放出する高等植物型の光合成を行う。水からの酸素放出は、光化学系�競織鵐僖�質複合体で行われる。
光化学系�兇蓮△茲�似た２つのサブユニットが点対称でくっついており、一つのサブユニットは、さらに小さい１０のサブユニットでできている。この複雑きわまりない構造が、30数億年前には完璧にできあがっていたのだ。これだけの急速な進化をどうやって遂げたか。そしてその後30億年以上、ほとんど変わらずに自分自身を保持し沈黙を守ってきたのはなぜなのか。なんとも不思議につつまれている。
今の高等植物は、この仕組みを新しく作ったわけではなく、シアノバクテリアを、共生、いわば内部に無理やり幽閉し、光合成させる方式をとった。今の高等植物の光合成のタンパクと、シアノバクテリアの光合成のタンパクはほとんど同じである。
数億年後、シアノバクテリアが陸に上がってくる。陸生シアノバクテリアだ。
陸生シアノバクテリアは相当強い乾燥耐性能力を持ち、８ヶ月、いや100年乾燥した後でも、水に戻すと、すぐに光合成を始めるという。
本来水の中で安定なものを、水がない状態でも安定にできているのはなぜか。水がない状態では、タンパクの立体構造がかわるはずだが、あまりかわるとタンパク質は機能を失ってしまい、シアノバクテリアにとってはよくないだろう。水にかわる乾かない物質を作り出しているのではないか、とも考えられている。
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