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宇宙から見た地球は

宇宙飛行士の野口聡一さんは、EVA(船外活動)体験中のことを、こう述べている。「地球と一対一で対峙しながら考えたことは、見渡す限りの星空の中で生命の輝きと実感に満ちたこの星は地球しかないということでした。それは知識ではなく実感です。天啓と呼んでもいいかも知れない。それが私にとっての人生観の変化と言えるものかも知れません。」

宇宙人としての自覚を持ち始めた人類が気づいたのは、地球における生命の特殊性だった。

SETI( The Search for Extraterrestrial Intelligence )という地球外知的生命体を探すサイエンティフックな試みがなされている。この試みがもっともっと範囲を広げて、太陽系の中で、いや銀河系の中にさえ広がって、それでも知的生命体が宇宙に見つからないとき、逆に、自分自身、そして生命と緑に富んだ地球の存在について考え直さざるをえなくなるだろう。

今、「火星に緑を」というスローガンとともに掲げるべきは、「地球に緑を」この一見古びたスローガンなのかもしれない。

砂漠に緑を

中央アジアや北アフリカにみられるように、人が木をかり、草をかることで、砂漠は地球上で驚異的なスピードで広がりつつある。砂漠緑化にも、シアノバクテリアを使った解決策が考えられている。 砂漠といっても、一年中雨がふらないわけではないから、砂漠化している地域を大きく囲い、その中に乾燥耐性のシアノバクテリアを撒いて数年かき乱さずに放置すれば、必ず地表面をクラスト化、つまり、砂化しないようなべたっとしたシアノバクテリアを土壌の表面に定着させられるはずだ。シアノバクテリアが定着さえすれば、草地化に向けて後は早い。

ただ、環境問題はその背後に政治的・経済的な難しい問題をはらんでいる。 例えば、モンゴルでは、砂漠化を食い止めるためには、実験場にシアノバクテリアを粉で100トン、ヘリコプターで運ぶ必要があるという。これだけ大規模なことは、一つの研究室ではとてもできることではない。国連のような大きな機関でやるしかない。 お金の問題だけでもない。草がはえたとしても、そこにまた人が入り込めば、元にもどってしまう。 地球の砂漠化に立ち向かうには、サイエンスの力だけではどうしようもない部分が確かにあるのだ。 しかし、だからといって、研究を止めるわけにはいかない。 この技術を使うか使わないかは人間次第だが、科学の発展が引き起こした、環境破壊という闇に光を当てるのも、科学でしかない。

大森先生は、こういう。 「我々は真理を知ろうとするだろうし、知ることは義務でさえあります。たとえ真理が我々の未来に何の希望をももたらさないものだとしてもです。我々がここまで知能を発達させた以上、真理の探究はやっていかざるを得ないでしょう。そして、その過程は決してつまらないものではなくて、とても楽しいものなのです。」

写真:取材中の大森先生

最後になるが、3時間におよぶ取材にお付き合いいただいた、大森正之先生、得平博士、肥後さんに、感謝の意を表したい。

参考web

  • 埼玉大学理学部分子生物学科代謝研究グループ大森研究室
  • 宇宙農業サロン
  • 宇宙微生物学
  • 日本微生物生態学会
  • 文責:野村直子

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