これからの研究は…
最後に、今後面白そうだと思う研究について伺った。
モデルによる解析
個体数の変化、密度変化などを、いろいろな要因を含め、できるだけ自然界の現象を再現できるように数式化したもの。
たとえば、ロジスティック式。これは、時間tによる密度Nの変化を表したものである。 参考程度に式の出し方を書いておく。
まず、密度をN、密度0の時の一個体あたりの増加率をr、増加率0の時の密度をKとする。(rは内的自然増加率、Kは環境収容力と呼ばれる。)
ここで、1個体あたりの増加率 が、密度Nに応じて直線的に減少すると仮定すると、
となる。 |
これを変形して、
時間tによる密度Nの変化の式(ロジスティック式)
が得られる。 |
この式を基本に、様々な式が導かれる。例えば、ロジスティック式に他種の及ぼす影響(α)を含めれば、競争関係にある2種の片方、または双方の生存率も式で表すことも可能である。
実際には生物の個体の増減や個体間、種間の関係はそれほど単純ではないが、様々な要因を式に組み込んでいくことでより自然に近い動態が再現できるようになる。これを応用して次のコンピュータシミュレーションへと続ける。
コンピュータシミュレーション
これは、はじめのほうの松枯れの話でも書いたが、コンピュータで、自然界の生物の動態を再現してみようという試みである。
実は私は東大柏キャンパスで一度見たことがある。蟻がえさに集まってくる様子のシミュレーションだった。動きは本当に蟻そのもの。バーチャルな蟻の世界を目の当たりにして、不思議な気分だった。
数式にしてもシミュレーションにしても、自然界のことを人間がこうやってデータ化というか情報化できてしまうというのだから、すごい。
性淘汰
環境淘汰は、環境に適応でき、より生き残りやすいものが残るというものだが、性淘汰は、より子孫を残しやすい、異性に選ばれやすいものが残るというものである。
昆虫の交尾器は多様である。これは種の同定や系統進化を考えていく上でも重要だが、その進化過程には性淘汰が強く影響しているはずだ。さらには求愛行動には場所、時間などの要因も複雑に関係しているはずである。昆虫類の繁殖生態・形態の解析を通じて性淘汰の研究を進めていきたいとおっしゃっていた。
枯れ木につく穿孔虫
枯れ木を食う虫。枯れ木を食ったところで人間にはなんの被害もない。そのため研究があまりされていない。生木を食う虫はいわゆる害虫の範疇に入るので研究が比較的進んでいる。ところが実際には、生木の材部には栄養分がほとんどないため、枯れ木を食う虫のほうが圧倒的に多い。(生木を食う場合には比較的栄養に富んだ内樹皮と呼ばれる部分を食べたり、菌を植え付けて食べたりする。)
よって、研究材料が豊富である。
そして、これらの穿孔虫を調べて面白いのは、やはり菌類やバクテリアといった微生物との共生関係だ。
クワガタなどは、微生物との共生関係にあり、腐朽材の分解をすすめているといわれている。もう少し詳しく書くと、カミキリやクワガタは微生物によって栄養状態が改善された材をばりばり食べて、そこにまた微生物が関係して、またばりばり食う、という繰り返しで腐朽材の分解をしている、ということだ。また、いくら共生関係といっても、菌のあるところにすむのは虫にとって危険である。微生物に対してなんらかの防御をしているのではないか、とも考えられる。
文責:野村 直子
準備中