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科学を熱くする
〜科学が社会と教育を変えていくためには〜

ガリレオ工房理事長 滝川洋二

今日は特に大学生の方が多いと思いますので、僕の今までの活動の紹介がてら、みなさんがこれから社会を変えていこう、あるいは教育を変えていこうという時に、そのヒントになることを伝えられたらと思って準備してきました。

自己紹介がずーっと長く続くようなもんだと思います。その中でみなさんに伝えたいことも一緒に入っています。


教師には、なりたくなかった

僕は、高校の教諭を27年間していたんですけれども、大学時代に一番なりたくなかった職業というのが教員でした。なんでなりたくなかったか。

僕は都立の進学校に高校時代通っていたんですが、その学校で文化委員会というのがあった。ある時たまたま委員会に遅れていって、「今まで何やってたんですか」って質問したら、やる気があるように見られて、委員長にさせられてしまったんです。受験校なので、3年になるとみんなやめちゃうんですが、僕は生徒会のちっちゃな活動を続けて、学校の中のみんなの不満を集めて先生に渡す、という仕事をやっていました。声がちっちゃいとか、黒板の字がちっちゃいとか、そういう不満を伝えるんです。今から考えると、先生にとったら嫌なことですね笑。それをずっとやってました。

僕の学校では3年の1月の後半から受験で授業がないんですが、その頃、僕がかなり親しくしている先生の授業でクラスのボイコットがおきてしまった。 それを僕は全然知らないまま先生のところにいったら、「いやぁ、ボイコットされちゃってね。滝川くん、どんな授業にしたらいいと思う?」って先生が聞いたんです。僕が答えたのは、「生徒は、分からないということはいえるけれど、どういう風にしたらいいかっていうのは言えないんですよ、それを考えるのが先生の仕事なんです。」て言ったんですね。言った後で、こういう生意気なやつがいるから、教師にだけはなるもんかって思った笑。

大学にはいって

そういうわけで教育に行くつもりはなかったので、大学では物理学を目指しました。 一番最初に物理学のほうにいこうと思ったのは、高校時代で、朝永さんがノーベル賞とったときですね。それから、湯川さんが、空間とか時間はとびとびだと、新聞に書かれていました。そういった空間や時間の捉え方は、孟子や孔子の教えにも共通点があるというようなことを書かれていたんですね。そういう影響があって、高校の物理って、実は物理じゃないんだ、きっと大学にいけば、もっと本格的な面白い哲学的な科学が存在して、それが勉強できるんだろう、と思ったんです。

それで物理学を志望しました。

本当は第一志望は東大だったんですが落ちまして、1年浪人してそのあと埼玉大学に入ったんです。そこで物理を勉強しました。

でも実は大学に行っても、面白い哲学的な科学には出会えませんでした。 そんなに高尚なのではなくて、計算問題ばかりで、がっかりしました。

しかもその当時、大学でものすごい大きな紛争があって、なかなか落ち着いて勉強ができなかったんです。そういうなかで、学校の授業ではなくて、できるだけ自分で勉強しようと思い始めました。大学時代に、友達と一緒に勉強する理工系のいろんな学生ゼミナールを、自分でたくさん作りました。その中で、"学ぶための方法論"という論文なようなものを自分で書いた。それは今も家にあると思うんですが、雑誌にも載って、ずーっとあとの後輩から、あれを読んで勉強したというのを一度聞いたことがあります。

大学っていうのは教えてもらうところではなくて、自分で学ぶところなんですね。その"学ぶ"っていうのは、言われたことをたくさん覚えることではない。どんなふうにしたら本当に自分の学びたいことを獲得して、成長できるか。研究者になりたいのならば研究者になるための資質っていうのはどういうものか、どうやったら獲得できるか。こういうことをいつも考えるのが必要だと思います。

ゼミをつくる

さて、僕は大学時代いろんなゼミを作りました。物理のゼミ、科学史のゼミ、解析概論を読むゼミ、量子力学のゼミ。だけど、やってる途中でつぶれたのがかなりあります。 他の人がこなくて、2人でゼミをやらざるをえない時に、僕が解説していたら、相手が寝てたってことがありました。しゃべりかたがよくないと思うんですけど笑。そういうことがあるとなかなか意欲がわかない。そうやってゼミはつぶれていきました。

そのなかで、ゼミがつぶれない方法を見つけました。 これが今ガリレオ工房が続いている原動力になるんです。

しっかりした人がついているゼミはいいと思うんですけど、自分が作ったゼミがつぶれていくって、結構悲しいんですよね。

じゃあどういうふうにしたら続けていけるのか。

僕が気づいたのは、自分がやめなければ続く、というすごく基本的なこと。じゃあ自分がどうやったらやめないか。それは、自分のやりたいことをやるってことなんです。人のためではなく、自分が本当にやりたいことを追求する。でも自分だけではできないので、まわりの人に声をかけるんですが、自分が意味を見つけてれば、他の人も一緒にやってくれる。それが、ゼミを続ける一番の方法なんです。

そして僕がこの後いくつか作った研究会は、つぶれていない。 例えばガリレオ工房はできてから20年で、もうすぐ21年になります。

学ぶには、3ヶ月

学芸大のマスターコースに入ってから、朝永振一郎さんの弟子の2人について学んでいました。そのうちの一人の方が、プラズマの研究会があるから出なさいとおっしゃったので、出してもらったんです。でも全く分からなかった。だけどその時点で降参するわけにはいかないので、短期間でついていけるようになる勉強の仕方を考えました。

先生に、量子力学の勉強を基礎からやりたいっていったら、怒られたんですね。そんなことやってたら、いくら時間があっても終わらない。一緒にやってあげるから、先端をやりながら基礎を学ぶという方法をとりなさい、って。

それで、どういうふうにしたらできるか自分なりに考えて、プラズマに関連した、ブルーバックスなどの一般啓蒙書を、一気に何冊も買って読みました。大学の学部学生向けの教科書や、大学院生の教科書を読んで、それと同時に、専門家と一緒にやらなきゃいけないので、論文もよんだ。論文って最初は何を言おうとしてるのか、全くわからなかったのが、だんだん言葉がわかるようになってきた。言葉に慣れてくるんですね。そうすると、ここらへんを言おうとしてるんだっていうのがわかってくる。数式をおっかけたり、そのもとの論文の解説を読んだりしているうちに、だんだん何をやってるかがわかってきて、自分も研究に参加できるようになっていったんです。

今ふりかえってみると、研究の仕方をそこで学んだんだと思います。新しいテーマを見つける。別のテーマは、いろんな人がある程度研究してるわけですよね。その研究しているところに、どうやって自分はでかけていって学び取るか。

大学を卒業してから、ジュラシックパークを書いたマイケル・クライトンという人の本を読むようになりました。彼はいろんなジャンルの勉強をしてるんです。ジュラシックパークの中には、生物学のものすごく基礎的なことから最先端まで、それから数学の科学に関連したことを非常に哲学的に語ってるところもある。映画で見るのと、原文を読むのとでは全然違う面白さがある。たぶんそのジャンルの専門家が読んでも面白いようなすごく深い中身を解説として書いてる。しかも年に何冊も出すんです。ジュラシックパークは生物学ですけれども、ライジング・サンというアメリカの中の日本社会を書いた本もありますし、コンゴっていう、類人猿がオランウータンと手話で会話するという最先端の研究を盛り込んだものもある。 これを見て、いろんな最先端の研究をとりこむのは、勉強すればできるんだなと思ったんです。

大体3ヶ月で、ある程度のところまで追いつける。ちゃんと研究ができるようになるにはもっと時間がかかるんですけれども、何が今問題になってるのか、っていうのは見えてくるようになるんです。

以上のことは、これから大学で勉強していこうというときに役に立つかなと思って紹介しました。


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