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社会を変えよう

物理教育実践検討サークルから、"ガリレオ工房"へ

これは後で分かったことなんですが、やっぱり教育をよくしていくためには、どんなに一人の人がいい授業やっても、それはその人で終わっちゃうんですよね。だから社会全体が変わっていくことが必要。そのためには、マスコミにも取りあげられなきゃいけない。でも一回しか取り上げられない声明では、声明が出たからといって社会が変わるということはない。もっと持続的に社会全体を変えていく活動が必要。それで僕は、学校の教育をよくしようとばっかり思ってたんですけれども、社会を変えようという方向にすごく動き始めました。

急に変わったわけではなくて、だいたい80年代の終わりから90年台の始めに、どんどんその考え方が大きくなっていった。社会にアピールできるように分かりやすくしようと、物理教育実践検討サークルも名前を変えました。僕が考えたのが、”ガリレオ工房”。ガリレオ・ガリレイは、研究論文を対話形式で書いているんです。その当時学問は、イタリア語ではなくて、ラテン語で書かれていた。自分たちの言葉で書いていたんですね。科学と社会を意識した活動をしていたんです。それで、ガリレオにしました。ニュートンとかじゃなくてガリレオだって思って、ガリレオ工房という名前にしました。

取材してくれた記者には、ガリレオ工房の通信を送るようにしました。それからその当時から、通信の中身もかなり変えました。今でも、先生たちのサークルは一杯あるんですが、ガリレオ工房の通信だけが、教育の動きをいつも追ってる。面白い実験をのせるだけではなくて、今社会で何が問題になってて、理科離れに関してはこんな取り組みが行われてるっていうのを発信するニュースソースを作ろうと思って、通信をつくりました。で、このころから、24ページの通信のほかに、A4表裏で、マスコミの人だけに一緒にいれて渡すのも作りました。たぶん通信読まないだろうと思って、そこだけ見たらば取材に関連したことが全てわかるようなエッセンスをいれたんです。 実験は興味ないだろうから、それはのぞいて、どこでどんなイベントがあるか、これからどんなことが問題になるか、特に科学部の人は社会部の中についてあんまり知らないことが多いので、できるだけ情報をのせました。よくみてると、ガリレオ工房の通信を元に取材して作った記事っていうのも沢山でるようになった。それからテレビ番組も、ガリレオ工房の記事がベースで新しい番組が作られたなって分かるようなのがありました。 今は、記者の人が転勤すると、こちらに送ってください、というのがものすごくたくさん届くので、見てくれてるんだなと。そういう社会との関わりをもっと広げたいですね。

あと、僕はサークルの縁の下の力持ちだとずーっと思っていたので、表に出るってことは全然考えていませんでした。ところが、メンバーが個人名をだせっていうんです。マスコミのなかに誰かが突出して出ると、それによって活動がどんどん広まっていくからって。 例えば今米村さんがでることによって、かなり運動が広がってますよね。 でもガリレオ工房以外に、滝川洋二で売れって言われて、ものすごい困りました。なにしろ指導者になるとか、そういうタイプの人間ではないと思ってましたので。でも社会を変えるにはある程度知名度があったほうがいいだろうと思いまして、恥ずかしがってばかりもいられないというので、いろいろ活動を広げることにした。ただ、これでずーっと社会に科学の面白さを伝えていくには、批判ではきっとだめだろうと思った。それで、新しい動きを作るのに、ずっと挑戦していった。これがある意味で、社会にでる、っていうことだったんですね。

ガリレオ工房公式サイト

科学の祭典

僕がかかわって、これが歴史を変えたって思うのの一つに科学の祭典があります。91年に、物理教育学会が作った小さなイベントなんです。1000人くらいが参加した、中高生のための科学の祭典っていうのが91年にあって、それを翌年、科学技術館が主催で一緒にやりませんかというので、科学技術館が主体になって、全国3箇所で初めた。それが今は、全国90箇所くらい、東京の大会は、6日間で6万人から8万人くらいの参加者になった。実際イギリスではもっと幅広い同じような活動があるんですけれども、それでも急激に伸びたという点では、世界の中でもすごいとおもいます。

ただ、ちょっと紹介しておきたいんですが、これを始めてすぐに、韓国も科学の祭典を始めたんです。韓国の科学の祭典は、地方でも、ものすごく大きな会場でお金をふんだんに使ってやっています。国と産業界がものすごい支援してる。それにたいして、日本の科学の祭典は、国からの支援もわずかで、ほとんど自前でやっています。ボランティアで動いてる。ボランティアベースで、来年小金井で、初の東京地方大会っていうのを僕が企画して動かす。 実は、これはものすごく大きな影響を日本に与えたと思うんです。

というのは、それまで科学実験で地方にすごく優秀な人がいても誰も知らないんですよ。ところが全国大会にくるようになって、実験の名人はほとんどみんな顔見知りになった。 実験の名人の科学ボランティアがみんな顔見知りになった。

それから、テレビで、「やってみよう!なんでも実験」というのが始まりまして、新しい実験から一斉に広まる。そういうのが続いて、科学の祭典を作った後藤道雄さんっていう人が、ブルーバックスで、「子供にうける科学手品77」っていう本(74万冊、ブルーバックスで過去最高を記録)を97年に出したんですが、これが科学実験ブームがおきるきっかけになった。 それは、科学の祭典がなかったら絶対できなかったと思います。今ずーっとテレビや新聞で理科離れを取り上げているのも、この科学の祭典の紹介から始まるんです。科学の祭典をどうしてやるんですかと聞かれて、理科離れの話につながっていく。

そういうふうに、科学の祭典は、取材のソースに一方ではなってる。東京だけでなく、地方大会も必ず新聞に取り上げられてるんです。東京は、イベントが多すぎてなかなか宣伝しにくいんですけれども、地方はものすごい効果があるんですね。今日本の中で一番大きな大会をやっているのは、実は熊本です。2日間で6万人。全国大会は6日間で6万人から8万人ですからすごいですよね。どうして熊本でそんなことができているかというと、熊本県民テレビがスポンサーになっていて、科学の祭典熊本大会を支持してます、って広告をだしているわけです。 その広告収入から科学の祭典の運営費が出ています。会場は、熊本市内からすっごい離れたところで、一日そこにいないとしかたないような辺鄙なところなのに人がくるんです。 この科学の祭典やってみてびっくりしたのは、集客力がすごい、それからいったん動き始めると、町とか市とか、いろんな人が動いて、街づくりにも貢献できる。昔はお祭りが街づくりに使われてたんですが、今は、科学が街づくりとして力を発揮できる時代になってきたんですね。

サイエンスショー

ガリレオ工房は、とにかくいろんなことに手をだしました。まず、企業と一緒に全国9箇所で、実験教室を開きました。普通の方が想像するよりもずっとびっくりするような中身を作っています。 毎年新しいテーマで、新しい実験を作りあげています。例えば、今年は、音をテーマにやりました。 オングという効果音をテーマに、音の世界を紹介する。効果音のいろんな装置を自分たちで作る。たぶん、どこでもやったことのない実験です。それをプログラムを作って、全国で実地しました。

それから、もっと違うのでは、省エネセンターがスポンサーで、読売新聞社と一緒に、エネルギーを考えるサイエンスショーというのをずーっと10年間、年に2回実施した。これは、なかなか紹介しにくいんですが、実験ショーではあっても、実験が中心ではないんです。日本生命館でやったときは、会場に入るときに、宇宙線の入り口って書いてあるんです。みんなが宇宙線の中に入って、席につくと、宇宙船がある星に向かって出発する。途中で、十分星までいけるはずの余分に用意してたエネルギーが足らなくなってきた。調べてみると、みんな安心して結構無駄遣いしている、ということがだんだんわかってきて、このままでは、たどりつけない。半分の人は、ここで戻ってもらわないといけない。じゃあ、次の何番の人は、この会場から出てもらいます、というところで暗転して、そうじゃなくて、みんなで生きる方法を考えようというふうに話が進展する。

何を考えてるかっていうと、宇宙船地球号をそのストーリーの中で考えてもらいたい。 新聞記者の人が子供連れて参加して、後で取材にきたんですが、帰ってから家の中で子供が電気消せとかカーテン閉めろとか、もう大変ですよ、って言っていました。 僕は将来は地球を守る科学者になる、といってくれた子供もいました。 生き方を子供でも考えたくなるような、そういったことを伝えるのが、普通の実験教室じゃなかなかできないんですよ。ショーの中にメッセージをこめて、そのメッセージがダイレクトに伝わるように構成しないといけない。そういうものをしかも高い文化としてつくれないか。 面白い実験をやりたいというのではなくて、本当に心の中にはいっていくような、新しい文化をつくれないか、それを日本から発信できないかって思って作った。

僕たちガリレオ工房では実験をいろいろ用意しました。今は、僕らはしゃべらずに、プロの役者にストーリーは全部任せて、シナリオを作ることに徹しています。それから、音響照明は、CATSを担当しているところにお願いしています。

この場所に入ってスタートしただけで、違う世界にいけてしまった。そういうのがこのサイエンスライブショーで、それを去年は、震災で被災した子供たちに勇気をもってもらおうと、長岡で世界物理年を記念して行いました。それもものすごくメッセージ性があったんですが、そういうものをやろうとしています。 僕は、いずれはこれが世界の中心になっていくんじゃないかなと思ってます。

科学ブームを仕掛ける

それから、沢山実験を開発したのは、本にしてます。『ガリレオ工房の身近な道具で大実験』(大月書店)とか、『ガリレオ工房の科学あそび』(実教出版)とか。

数日前にはクイズの本をだしました。『科学の常識が面白いほどわかる本』(KAWADE夢新書)。これが一番新しい。その中には、60度と20度の水を冷凍庫にいれると、どっちが先に凍るかというクイズが出ています。 常識的には、20度が先に凍るんですけど、違うんですよね。どうして違うんだろうと思って、どうしても中身が読みたくなる。読んでみると、ほんとかな、と思って、実験したくなる。でもこれは実験の本じゃありません。ただ僕ら、実験をいつもやっている僕らじゃないと、書けないような本ではあると思います。

読んで面白いなぁというのが、名探偵コナンが科学で事件を解決するシリーズ。僕が、こういうの作りませんかって小学館に提案したら、じゃあ作りましょうってことになって、できたんです。まさか通ると思ってなかったんですが。

このシリーズはものすごい苦労してます。毎月一度集まって、実験のネタだしをするんですけれども、その実験がどんな事件につながるか、どうやったらそれが解決につながるかを考えないと、ストーリーができない。多くの、コナンを使った学習本とか、ドラエモンを使った学習本っていうのは、参考書にドラエモンがでてきて、ちょっと解説するだけ。これは違うんですよ。本編と同じようなストーリーがあって、事件がおきて、事件を解決する。 いずれテレビに放映するとか、映画にしたいと考えています。今4冊でてるんですけど、放映化されて、こういうコナンの本があるということが知られるようになると、すぐ出てくると思います。

僕は科学ブームをまた別の面でつくりたい。だからその仕掛けなんですよね。ただ仕掛けるだけではなくて、中身もいいものを作る。テレビ化されるためには、実験がいくらあっても、ストーリーが面白くないとやってくれない。だから僕はストーリーにこだわる。子供は、コナンの本読み始めると、大体最後まで全部読み通します。 ちょっとめくってみると、実験が一杯のっている。そういうふうに作りました。 ほとんどは向こうからの依頼で本を作るんですが、これは僕が提案して作った。 社会を変えたいっていう思いでつくってるんです。


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