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鷹・鷲について

〜カラスとトビと油揚げ〜

『あなたにとって一番身近な鳥は何ですか?』と尋ねられたらなんと答えるだろうか。スズメ、カラス、ハト、インコ、文鳥・・・・・フライドチキン。いろいろな答えが返ってきそうだが、最近とりわけ身近になってきた鳥はカラスだろうか。身近になったということは人間との軋轢が生じてきたことの裏返しでもある。ごみ問題をはじめ、様々な問題が生じており、人がカラスに襲われる事件も生じている。

一方で「トビ」が人を襲うケースも報告されている。人間を狙って・・・・というわけではなく、人間の食料がお目当てらしい。弁当を狙って急降下したトビの爪で怪我を負ったというニュースをしばしば耳にする。「トビに油揚げをさらわれる」という諺があるが、昔もきっと似たような『事件』がたびたびあったに違いない。

今回のテーマは『タカとワシについて』だが、このトビもタカ目タカ科に属する正真正銘のタカである。ところでタカとワシはどこが異なるのだろうか。一般にタカ目に属する鳥類のうち大型のものを総称してワシ、小型のものをタカと呼ぶ。しかしクマタカのように大型のものでも「タカ」の名を持つことからわかるように、両者の間に特に明確な区別はない。まとめてワシタカと呼ぶこともある。

〜鷹狩りあれこれ〜

これらワシタカを用いた狩りがその名のとおり鷹狩りである。弁当や油揚げをさらうのだから、トビで鷹狩りをすることもできるのだろうか?残念ながらトビはおとなしい気性のため鷹狩りには向かないらしい。現在鷹狩りで用いられるタカのほとんどがオオタカである。ちなみに今回の駒場祭の講師である松原氏はクマタカとイヌワシを使っている。用いるタカの違いは狩りの違いも意味する。

現在の日本の鷹狩りには2種類ある。鷹狩りの起源は中央アジアの遊牧民にあるとされており、日本には5世紀後半朝鮮半島より伝わったといわれている。それ以後鷹狩りは武士、貴族の特権階級のレジャーとして栄えた。明治維新後は宮内庁によって鷹狩りの文化は保護されるが戦後衰退した。現在の鷹匠は松原氏を除いてこの流れをくんでいる。一方で東北地方の農民の間では古くからレジャーではなく生業としてクマタカによる鷹狩りが行われていた。一説によると秋田の殿様がクマタカを飼育していた記録があり、そこから鷹狩りの技術が農民の間に伝わったのではないかといわれている。しかしその由来は定かではない。ちなみに松原氏は現在日本でただ一人のクマタカによる鷹狩りをする鷹匠である。

〜タカと人の接点〜

タカの多くは生態系の頂点に位置する。そのため非常に環境の変化の影響を受けやすく猛々しい外観とは裏腹にデリケートな存在でもある。日本国内のワシタカの仲間でもレッドリスト対象種や天然記念物に指定されているものは少なくない。そのため日常生活でタカを目にする機会はそれほど多くない印象を受けるかもしれない。しかし近年高層ビルにハヤブサの仲間が巣を作った例や、「ツミ」というハトほどの大きさのタカの都会での個体数増加が報告されている。タカも柔軟に人間社会に対応しているようだ。それが望ましいことか否かは別として、タカと人との距離が変化しつつあることがうかがえる。(もっとも、都会のカラスの増加によってツミの個体数は再び減少傾向にあるとの報告もある)

一方で人とタカとの間で思わぬトラブル例もある。北海道根室市で風力発電機のブレードに希少種のオジロワシが翼や胴体を切られ死亡した事故が数件報告されており問題になっている。クリーンエネルギーと称される風力発電の思わぬ落とし穴である。

一般に鳥が風力発電機や飛行機などの人工物に衝突することをバードストライクと呼ぶのだが日本では(航空機との衝突の場合)年間千件近く起きているそうだ。ちなみに鷹匠の協力でタカを使って空港から鳥を追い払う取り組みも行われている。

〜タカの渡り〜

そろそろ北から渡ってきたハクチョウが見られる時期。ところでタカの中にも渡りを行うものがいることをご存知だろうか?毎年9月から10月、数種のタカは越冬地である東南アジア周辺を目指して日本を去る。この時期、各地で個体数調査が行われ、調査団体の全国的なネットワーク(http://www.gix.or.jp/~norik/hawknet/hawknet0.html)も存在する。そのうち長野県白樺峠に拠点を置く信州ワシタカ類渡り調査研究グループは一昨年、東京大学・樋口広芳教授、信州大学・中村浩志教授と協力しハチクマと呼ばれるタカの渡りの衛星による追跡に成功し、非常に興味深い結果が得られている。

国境を超え世界規模で繰り広げられるタカ達の渡りに思いを馳せてみてはいかがだろうか。

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文責:後藤祐介

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