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マルティン・ブーバー「我と汝」

マルティン・ブーバー(1878〜1965)はオーストリア出身のユダヤ教宗教哲学者・社会学研究者。

「世界は人間のとる二つの態度によって二つとなる。人間の態度は人間が語る根源語の二重性にもとづいて、二つとなる」。この二つの根源語が、《われーなんじ》と《われーそれ》である。前者が二人称の世界、後者が三人称の世界を構成するともいえる。

赤ん坊は、生まれながらにして関係を結ぼうとする衝動をもつので、《なんじ》を必然的に発見する。《われ》は、さまざまな《なんじ》の認識においていつも同一であるもの、として初めて見つけられる。《われ-なんじ》の結合が切れ、《われ》が一瞬《なんじ》と同列になり、自己に向かい合われるものとして認識されると、《われ》も「主体」という一つの対象物として認識され始めてしまう。《われ》が客観化されたことで、それまで《なんじ》としてしか捉えられなかったものが、同様に客観化されていき、そこで初めて客観的対象物という概念、つまり《それ》という観念が生まれる。ブーバーはこのように、《なんじ》があり、その後に《われ》が生まれ、《それ》はさらにその後に生じるものであると説明している。

例えばメロディーには音、詩には単語という要素があるが、ばらばらにしてしまっては元の意味がなくなる。同様に、私にとって《なんじ》である人から、髪の色や話し方、人柄などの《それ》を取り出してきたところで、その人は《なんじ》ではなくなってしまう。よって、世界は《それ》だけで構成されているかのように考えるのは、全くの間違いである、とブーバーは主張する。「おお、知識の堆積よ、それはどこまでも、《それ》《それ》にすぎない」。

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