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ダナ・ハラウェイ

アメリカ合衆国コロラド州生まれ。生物学的フェミニズムをベースにしつつ、その関心は生体政治学や霊長類学、ポスト構造主義的文学批評と多岐にわたる。「サイボーグ・フェミニズム」の提唱者として知られている。1985年に発表した「サイボーグ宣言」は、「サイボーグ・フェミニズム」(巽孝之編)に掲載されている。

ハラウェイは「サイボーグ宣言」の中で、サイボーグを「機械と生物のハイブリッド」や「動物であるとともに機械でもある生物」と呼び、サイボーグを機械と生物の間に立つものではなく、その境界にあって両者の差異を曖昧化するものとして位置づけている。またサイボーグだけでなく、自律性を持った機械に関しても言及し、それらの機械の出現が「自然と人工の差異はもちろん、精神と肉体、自己開発と他者依存、要するにこれまで機械と生物の間に適用されてきた差異のおおくを、ことごとく曖昧化してしまった」としている(それまでは機械と人間の境界として「自律性の有無」が挙げられていた)。科学技術の進歩によって、機械がより人間に近づいていく。その過程において機械と人間の間にあった境界がゆらぎ、脱構築が行われていく。つまり人間と機械との間を分ける絶対的な境界はないとしたと言えるだろう。

人とロボットのあいだ、本当にそこに境界はないのだろうか? イノセンスや攻殻機動隊においては、その境界として「ゴースト」の存在があると見ることが出来る(「攻殻機動隊-GHOST IN THE SHELL」においては、「人形使い」が「ゴースト」を得た存在とすることができるのならば、その境界もまた脅かされている)。

「サイボーグ宣言」は、全体的にはフェミニズムやジェンダーに関する考察であり、ハラウェイ独自のサイボーグというイメージは、人間と機械の境界だけにとどまらず、男女性差やその他の二項対立群の脱構築にも及んでいる。この宣言は発表後一躍センセーションを巻き起こし、以来、文化批評やジェンダー論に多大な影響を及ぼしている。

ちなみに、「イノセンス」において暴走したハダリの検死官の名前がハラウェイとなっている。サイボーグ宣言内で男女性差の二項対立を脱構築した「ハラウェイ」が、意図的に性を与えられたガイノイドを検視する、というわけである。

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