クリプキ「Naming and Necessity」
論理学者ソール・クリプキ(1940〜)の代表的著作。1980年刊行。邦題『名指しと必然性──様相の形而上学と心身問題』。「言葉」と「実在」を結びつけている関係=「指示(referance)」をめぐり、それ以前の哲学のなかでしばしば混乱のもととなっていた「必然性」「可能性」という概念に対して新たな考察を行っている。
本書のなかでは「指示の固定性」というテーゼが重要な位置を占めている。ものの名前(固有名)は、何かを指示するために使われるが、それが果たして何を示しているか、と考えてみよう。たとえば「アリストテレス」という名前を考えたとき、「アリストテレスはアレクサンダー大王の教師だった」「アリストテレスはプラトンの弟子だ」など様々な記述が可能だが、固有名「アリストテレス」の指示するものをそうやって説明し尽くすことはできない。クリプキによれば、質的性質による媒介をなしに、「アリストテレス」という名前は「アリストテレスであるという性質」を直接的に示しているという。本書の議論はさらに、固有名がいかにしてこのような指示をなすのか、という点にも踏み込んでいる。
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