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W-J・オング

W-J・オング(1912〜2003)は、アメリカの言語学者。ベーコンやデカルトに影響を与えたラムス研究の第一人者として有名。

オングは主著「声の文化と文字の文化」において、会話言語により形成されていた「声の文化」が、書くことの発明によって「文字の文化」に移り変わったことで、人間の思考過程、性格、そして社会構造の上に大きく深い変化がもたらされたことを指摘している。

口語の時代にはすべての言語は「方言」であって、狭いコミュニティーでしか使われないものであったが、いくつかの方言が、「書くことをとおして整除される国民言語としての地位をえることによって、広汎なしかたでは書かれることのない、他の諸方言とは異なった種類の方言となった」ことで、爆発的に同言語を使う人数や地域を増やしていき、多様な考え方や語彙の交わりを実現したため、元々は数少ない常套句だけで成立していた「会話」が、増大した「文字」に引っ張られて、結果的に大きく形を変えていったのである。

これは、オリジナル(会話)がコピー(文字)の出現によってそのあり方を変えたことを意味するのだが、同様のことが、オリジナルである人間と、利便性を追求して作られるロボットやサイボーグとの関係にも生じうる(現実に生じている)と考えられる。人体のサイボーグ化によって肉体的な可能性が広がるというだけでなく、われわれの今までの「人間的な」思考や思想そのものが、機械化に伴って(ますます)変容していくということである。

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