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日本とアメリカの違い

岩間今回主に日本とアメリカの研究室を取材されたわけですが、研究の進み具合はどうでしたか?
岡田進み具合ですか、僕が評価するわけにはいかないんですけど(笑)。

まず、何が違うかというと、予算が違います。それははっきり違いますね。どちらが優れた研究をしているかは分かりませんけど、予算はすごいですね、アメリカは。それは番組でもお伝えした通り、軍事費だとか。NIHという厚生労働省みたいなところがものすごいお金をかけています。お金のかけ方が桁違いに違います。例えばニコレリス教授の研究室はビルが建ってるんです。一人の研究者のために。そういう資金の流れはアメリカはすごいという驚きはありました。お金をかければ必ずいい研究が出来るかというと必ずしもそうではないですけど。いずれにせよ、そういう仕組みは日本にはまだ出来ていないのかなという感じは受けました。
岩間研究の方向という面では大きな違いはありましたか?
岡田研究って後世にどうなっているのかっていうのは分からないので何ともいえません。ただアメリカでは脳・コンピュータインタフェースの脳にあるタイプの電極を刺してデータを直接とるという方式では、研究は明らかに進んでいて、お金も出ているので、そういう点では進んでいるといえるのかも知れませんが、それが後世になって主流になるかどうかは分かりません。別の方式では日本の方が進んでいるとも聞いてますし。日本でも電極などの基礎研究をやっているところはいっぱいあるんですよ。ただお金をかけないと将来の競争という意味では危ないかな、といろいろ心配になることはありますけど。

日本では議論がされていない

岩間法整備という点では?議論を含めてどうですか?
岡田ごく少数の専門家の間を除いては、議論がされてないですからね、日本では。議論が始まっているということではアメリカは進んでいるのでしょう。
永田アメリカの予算が大きいのはやはり軍事利用したいというのが大きいのですか?
岡田それもひとつ大きいと思いますが、DARPAは軍産複合といって、いわゆる軍事技術と産業と科学というものは基本的に一体となっている仕組みなんです。別に軍事だけやってるんじゃなくて、あそこは基礎研究もやってるんです。それは何のためかというと、それを軍事技術に利用して、さらに産業にも取り入れるという。インターネットがそれのいい例なんですけど、インターネットはDARPAが開発したんです。あれはもともと核戦争で他の通信手段が全部ダメになったときでも機能するネットワークを作ろうといって始まった研究なんです。それが民間に広がっているんです。そうやって軍事で使って産業に応用するという軍産複合体という仕組みがあるんです。そこの一環として出てきているんです、サイボーグ技術も。

立花さんもこれはおっしゃってたんですけど、日本とアメリカの大きな違いは、日本は必ずこの期間までにこの研究を達成しなさいと目標を立てて、そこで達成しないと予算が削られてしまう、と。そういう成功失敗型で進んじゃうんです。予算の付け方が。そうすると思い切った研究がなかなか出来ないんです。立花さんはそれをよくおっしゃっています。逆にアメリカは軍事というと、無尽蔵とは言わないですけどかなりの予算を割いているので、失敗を前提にある程度のお金が出ちゃうんです。ただ、それが軍事から出ているのは、どうかと思いますが・・・。

ただ科学研究の進め方で言えば、軍事以外の理由でももっとお金を出してもいいと思うんです。それは日本は日本のやり方で出来ると思うんですけど・・・。

そういう違いはあると思います。

飛鳥井アメリカと日本を比べて、人体改造に近いようなことは、日本ではやはり進みづらいなと感じられますか?
岡田そうですね。アメリカでは個人と個人の間でOKとなると、それで通ってしまうんです。まぁもちろん、それ以外にもいろいろな規制はありますけど。基本的にそこが重視されるんですね。それに対して日本は、全体の、社会全体の考えが重視される社会ですから。ただ、逆にアメリカはすごく動物実験は大変ですよね。すごく厳しいんですよ。今回も撮る角度とか、どこまでなら出していいかとかですごく苦労しました。

DARPAについて

平山藤木さんにお伺いしたいのですが、さっき技術をしっかり検証していかないといけないというふうにおっしゃいましたが、サイボーグ技術以外でも何か検証してみたい技術はありますか?
藤木うーん、難しいですね。岡田や近江と話していて、本当に出来たら面白いね、と話していたのは、今回で言うならDARPAですよね。多分DARPAがこれだけ金を出すからこれほど技術が進んできたというところはあるんです。日本だと山海先生だとか、横井先生だとか、個人個人でがんばってる人が多くて、なんていうのかな、「個人で世界と戦っている」っていう感じで。それに対してDARPAって言うところは組織で、間違いなく軍事目的でドーンと金を出している。今回我々が見えたところってほんの一端にしか過ぎないと思うんです。僕が岡田から聞いてびっくりしたのは、DARPA技術賞というのを出していて、シェーピン教授、ニコレリス教授も賞をもらっているんですけど、もらった時には、研究内容を公表しないらしいんですよ。今年もDARPAは賞を出しましたけど、研究内容は公表していない。これがまさしくDARPAだな、と思って。これが戦争の論理と。では、それを作ってる研究者や技術者が悪魔の技術者かというと結構そんなことはなくて、敬虔なクリスチャンだったりとか、「自国の兵士を殺さないことがいちばんいいんだ」とか言うと思うわけですよね。そういいながらも、実際、今で言うとイラクであるとか、「現場」で起きていることとのギャップ…。そんなことを感じて。とにかくDARPAってほとんど取材させないらしいんですよ。だからあそこが人間をどういう風に変えようとしているのかということとか、技術だとかは、本当は取材したいし、取材しないといけないと思うんです。

僕は今まで自衛隊とかの番組を作ってきたんですが、やはり、防衛、いわゆる軍関係ですよね、そういったところは取材がきわめてハードルが高いというか。でも僕も戦争を知らないし、立花さんでさえ5年間の満州の経験だけですけど、戦争体験は受け継いでいかないといけない大事なことなんですけど、つまり戦争の記憶が薄れると同時に、やっぱり軍というか、防衛というか、それが前面に出てきた気がするんです。僕はイラク派遣はすごく大きな一歩だったと思うんですが、すごく、こう、自信を持ってきているんです。自衛隊という組織は今。だからあるところでは積極的にPRしていこうとしていますが、イラクとかだと情報を選択したものしか出さない、きわめて取材のハードルが高い状態になっているとも思います。それはアメリカも同じで、ベトナム戦争のときのほうが戦争をちゃんと報道できているように思います。今だと、例えば、スカッドミサイルってありますよね。あれが飛んでいって目標にぶつかる様子を世界のマスコミは我々も含めて報道するんですけど、その先で現地の人がどうやって死んでいるのか、どうやって嘆き悲しんでいるのか、それが伝わっていないのではないかと・・・。だから軍というものは、我々はみんな取材したいと思いながらなかなかハードルが高いというのが現状です。
岡田DARPAというものは組織の中心がないんです、ビルはあるんですけど。実体がない組織だとずーっと昔から言われていて、すごく難しいんですよ。トップが科学者なんです。番組で出てきた長官も科学者なんです。科学者がお互いでお互いを評価しあって、科学者のコミュニティが軍事に参加してる、みたいな、そういうところなんです。だからあそこはお金を配分しているだけで各地の研究機関に人がいっぱいいるだけなんです。
岩間最高意思決定機関はないんですか?
岡田お金を配分する事務局のビルはあるんです。でもその中では研究は何も行われていないんです。だから実際に何個か軍の秘密の研究室があってそこで日夜研究しているというようなものとは全然違うんです。そういう意味で普通の科学者が軍に普通に貢献しているのです。

あと、今回NHKスペシャルで出てきた勲章をいっぱいつけた軍人がチラッと出てきましたが、あの人は海兵隊のトップなんです。アメリカでは最高レベルの地位にいる一人なんですけど、あの人なんかもあそこで技術を見ていくんです。基本的には事務局が予算をつけるかどうかを決めていくのですが、その方針を誰がどう決めていくのか、非常に複雑な仕組みになっています。
永田今回の放送でもDARPAから警告はなかったんですか?
岡田それはなかったんですが、インタビューを撮りたいって申し込んだんですけど、断られました。今回取材した展示会、あそこは(DARPA技術賞を除いて)オープンにしてるんですよ。なぜかって言うとあそこはビジネスの場なんです。さっき言った産業へおろす場で、いろんな人が来て技術を買っていったりする場所です。自分たちが公開してもいいところだけを展示してオープンにする場なんです。
岩間最後に、これからサイボーグ技術は産業に、軍事に、哲学にどういう影響を与えるとお考えですか?
岡田編集の最中に「人類進化の一里塚」という言葉が良く出てきたのですが、ヒトという種族やヒトの脳がこの後どうなっていくのか、ということでいうと、今まさに、ものすごい変革期に入り始めたのだと思います。それが良かったかどうかは後世にならないと分からないですが、今議論すべきだというグリーリー教授の話はもっともだと思います。

山海先生のロボットスーツなどは、本当に実用的だと思います。立花さんもおっしゃっていますが、ロボット技術が抱えている問題があったんです。それは人工知能です。何も考えることがなかった機械が考えるようになったことはすごいことなんですけど、ただ、技術の限界で2歳とか3歳の知能さえできないといわれています。じゃあ脳を人工的に作っていくのかとなると、これも…。ロボット技術っていうのは手となり足となりという点ではすごく実用性が高いんですけど、頭を作るという面ではまだまだ技術が弱いわけですから、そういう意味では、山海さん型の技術というものはすごく発展しやすいと思います。
青山人間の機能を補う分野が応用されていくんですね。
岡田そうだと思います。ニーズが根強いですから。
岩間医療に応用できるものもどんどん社会に出て行くと思いますか?
岡田そうですね。医療はある部分まではいくと思うんですけど、やはり脳をいじるということに関しては議論があると思います。

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