日本における科学技術政策決定システム
第二期科学技術基本計画の経緯
次に第二期科学技術基本計画についてお話いたします。
配布資料10ページをご覧ください。これは科学技術基本法に基づいて、5年を1期として定められなければならないことになっています。
私は2001年1月から議員になったのですが、その3月に第一期の基本計画が終わりまして、その4月から始まるべき第二期基本計画の策定の仕事から始めたわけであります。無論それはゼロから出発したものではありません。
第二期基本計画案のたたき台が既にあったわけであります。それは科学技術庁が事務局となっていて、総合科学技術会議とは言わないで、ただの科学技術会議という、サイズの一寸小さいものだったのですが、そこで予め事実上進められていた下準備の成果です。
私はそれを策定する委員の一人になっておりましたので全く知らない話ではありませんでしたが、 いずれにしても最後の三ヶ月で「一体これをどうするんだ」「科学技術会議で用意しておいた案に一体どれくらい手を入れるんだ」「カバーページだけ付けてそれでいいんじゃないか」などと言っていたんですが、議論しているうちにやはりそうではないだろうということになった。その仕事が最初に手間の掛かった問題でありました。
第二期科学技術基本計画の概要
配布資料11ページをご覧ください。第二期科学技術基本計画(平成13年3月30日閣議決定)は大きく三つに分かれておりまして、第二期計画は第一期計画に比べてかなりスタイルが変わっております。
第1章が「基本理念」、第2章が「重要政策」ということで、その中にこの「戦略的重点化」ということが初めて出てきたわけであります。それから「科学技術システムの改革」が第二点、さらに「国際化」を進める、この三つの節から成り立っております。
第3章で「総合科学技術会議の使命」、自分で自分の会議の使命を決めているのです。
第1章・基本理念
配布資料12ページをご覧ください。「第1章 基本理念」で「目指すべき国」の姿を決めているのですが、50年でノーベル賞30人というところは大分冷やかされました。私も「品がないからやめようよ」と言ったのですが、どうしても入れろという天の声があって、こういうみっともないかたちになりました。
スウェーデンなんかに行きますとよく冷やかされたものです。ノーベル賞委員会とか、ノーベル博物館の館長さんとか、この基本計画の中で最も国際的に有名なのはこのくだりです(苦笑)。
配布資料13ページをご覧ください。第1章 基本理念(つづき)で、これは少し自慢したいんですが、ここに書いてあることは1月から3月の間に私が少し奮闘いたしまして、書き込まれたものであります。
科学技術と社会とはどのような関係にあるのか、一人歩きしちゃいけませんよ、という事ですね。「社会の中の」「社会のための」ということです。
それからもう一つは、文化の多様性の問題で、私自身が歴史家、法学部の中でも法の歴史をやってきた者ですから、この問題は非常に重要だと思うわけであります。西欧に生まれた科学技術文明と固有文化との共存について苦悩を続けてきた経験を日本は持っている。
これから発展途上国においても、確かに科学技術が発展し、人々に恩恵を与えるわけだけれども、その享受が固有の文化を失わせるようになっては困るだろう。文化の多様性を維持する、これをきちんとやる、それについて非西洋国家で最も早く近代化を始めた日本は国際的な役割があるのではないか。他の国、アメリカやヨーロッパの国にはない、国際的に重要な役割があるのではないか、ということをまとめたわけであります。
第2章・重要政策
配付資料14ページをご覧ください。ここから第2章 重要政策が始まります。
「戦略的重点化」と書かれていますが、その中で先ず第1に「基礎研究の推進」が掲げられています。基礎研究の推進こそが、つまり研究者の自由な発想に基づく独創的研究こそが、ブレークスルーを果たすのだということです。例の螺旋形の話であれ何であれ、何か具体的な目標があって何かを開発しようということで出てきた研究ではないわけです。
基礎的な研究によって、ドカンと生命科学というものがブレークスルーを起こした。分子生物学というジャンルも生まれたわけですが、こういうものの重要性をわきまえて基礎研究をキチンとやらないといけないということです。
それともう一つは、具体的な分野を定めて狙い射ちですね。この四つ、ライフサイエンス、情報、環境、ナノテクとそれに若干劣後した形でエネルギー、製造技術、社会基盤、フロンティアの四つ。
4プラス4と言いますか、8と言いますか、普通重点4分野といいますが。ここに盛り込まれるかどうかで各省の運命は決定的に違うわけですから、策定段階では、大変なつばぜり合いがありました。
第三期科学技術基本計画のはじまり
ちなみにこの新聞に出ておりました第三期基本計画案が次のページから始まります。
配布資料の15ページをご覧ください。(2005年11月15日付朝日新聞記事)2006年4月1日から5年間の、いわゆる第三期科学技術基本計画案の策定が、先ほど申しました専門調査会で行われています。
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