高度交通システム（ＩＴＳ）への貢献
高度交通システムとは、国土交通省を中心に推進しているもので、最新のIT技術（情報通信技術）を駆使して従来の交通システムを円滑化するプロジェクトである。カーナビはその一例だ。これによって、渋滞の緩和、安全の向上などが期待される。
【技術】駐車されている車の台数を自動計測するセンサ
現在、国土交通省が、駐車されている車の台数や車種を調査するときどのような方法をとっているかご存じだろうか。正解は、「人が車に乗って、一台ずつ数えていく。」である。これはとても手間のかかる作業であろう。それを、池内研ではセンサを取り付けた車を走らせて計測することによって、機械が自動的に行うことを可能にするシステムを開発している。
我々は外に出てセンサ付きの自動車を見せてもらった。
写真10 車内
写真11 車上に取り付けられたセンサ
写真12 運転席
私が車を見て抱いた最初の印象は、「いろいろなもの取り付けられている車」であった。ワゴン車なので様々な機械を乗せることができるのだろう。
我々は、駐車場にある車を数える際の映像を見せてもらった。車間間隔で台数を把握でき、ワゴン車、小型車など大きさの区別もつけることができる。もちろん幹線道路を走るような速度では数えることはできない。時速20�劼�妥当な速度だ。
【技術】ビルの影から出てくる車を予測。
交差点で監視カメラ一台の映像から車の動きを割り出し、様々な角度から交差点で何が起きたのかを見ることができるものがある。具体的に述べると、ビルの影で見えなくなっている車の動きが表示されるようになる。実際の交通事故をモデルに作ったＣＧでは、事故を起こした運転手から見た映像や、それを外から見ている映像など、多角的方面から見たＣＧを作ることが可能だ。
【技術】より臨場感のあるカーシミュレータ
現在自動車教習所やゲームセンターで用いられているドライビングシミュレータは、周りの景色がコンピュータで作られた「箱」であるため、非常に現実感がない。より臨場感を持たせるには、建物や周りの景色に実写のものを使えれば良いだろう。必要なのは一台のカメラだ。カメラを乗せた車を時速20�劼覗�らせて撮影し、異なる位置から撮った画像を適宜貼り合わせることで、たった一回の撮影で車線変更やら、転回やらをする仮想の車からの眺めを作ることができる。この「貼り合わせ」が大変なのだが、うまく角度を計算して貼り合わせれば従来のCGよりはるかに臨場感のある映像になる。
透明物体の形状計測
これが、池内研のうちで最も数式が集まった研究で、私にとっても難解なものだ。みなさんは透明物体、と聞いて何を思い浮かべるだろう。ワイングラス、シャンデリア、クラゲ、氷の彫刻。世の中には透明なものがたくさんあると思う。そこで、レーザーレンジセンサで形状把握することを考えてみよう。これは簡単にはいかない。透明物体の形状把握はきわめて困難なのである。なぜなら、透明物体は入ってくるレーザー光のほとんどが透過してしまい、反射光の時間計測で物体の形状を測る通常のセンサでは計測が難しいからである。そこで、写真のような装置を考える。
写真13 透明物体の形状計測装置
白いプラスチックの球（写真中央）の内部のちょうど真ん中に計りたいもの（透明物体）を置く。そして、図のような網の目構造に電球を配置して、プラスチック球を360度方向から照らす。透明物体を白いプラスチックで覆う理由は、光を乱反射させて、偏ることなくすべての方向から光を照らすことができるようにするためだ。数回の反射を経て光は上部に開いた穴から出てくる。そこを、偏光板を置いたカメラでとらえると、物体の形のデータを計算することができる。
写真14 穴と、上部のカメラ
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