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分化の鍵

私たちの身体を作り上げている細胞は、もともとは同じものである。それが、発生の段階を経て、あるものは皮膚の組織に、あるものは血球に、あるものは神経に…と、それぞれの特徴を持った細胞に変化している。この変化(細胞の「分化」という)のメカニズムを解き明かしたのが浅島教授の研究だ。何らかの物質の濃度勾配により分化が起こることは以前から知られていたが、長い間この物質は見つかっていなかった。浅島教授はアクチビンというたんぱく質が分化の鍵をにぎっていることを発見したのだ。アクチビンはまるで料理における「塩」のように働く。入れる塩の量が少し違うと料理の味が全く変わってしまうのと同様、細胞は、さらされるアクチビン濃度によって様々なかたちに分化していく。

同研究室では、卵が大きく、かつ数の多いカエルの、「胞胚・予定表皮+神経域」(通称・アニマルキャップ)を用いて実験をしている。操作はシンプルで、胚から切り出したアニマルキャップをアクチビンに浸しておくだけ。アクチビンの濃度・時間を変えれば、アニマルキャップは如何様にも分化する。(画像:濃度と分化の関係)

注:胞胚とは胚の表面にあった細胞の一部が内側に入り込み(陥入という)腸ができ始める直前の胚のことである。予定表皮域、神経域というのは読んで字のごとく将来表皮あるいは神経細胞になると、別の実験で証明されている部分だ(この“予定”を読み解いたのはシュペーマンとマンゴルドという研究者で、彼らの研究もとても興味深い。

各臓器には対応するアクチビン濃度があるわけだが(薄いと血球、少し濃いと筋肉、さらに濃いと脊索や心臓など)対応濃度が近ければ構造的に似た器官かというとかならずしもそうではない。ここでは胚における位置関係が深く関わっている。アクチビンは胚のどこからか(少しずつ解明されてはいるがまだはっきりとはわかっていない)放出され胚全体に拡散していくため、近くにある器官同士は近い濃度で分化するのだ。

また、「形づくり」に関係しているのはアクチビンの濃度だけではなく、アクチビンにさらす時間も重要なファクターになっている。たとえば同じ濃度のアクチビン溶液でも、短時間浸しておくと胴体だけのオタマジャクシが、長時間浸すと頭だけのものができたりする。

>>人工的に器官を作る

文責:徳田 周子

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