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miRNAの研究 -井上教授

井上実際の小さなRNAの研究と言うのが具体的にどんなことをやっているのかっていうのを僕らのグループの例で説明したいと思います。
もともと僕自身はスプライシングっていうことをもともとやってたんですけど、その延長線上で今の仕事をやっている。
繰り返しになりますけれども、タンパク質をコードしないncRNAが、染色体、あるいはmRNA、あるいはたんぱく質、いろんなところに働きかけて、その形質発現を制御してる。
真核生物のmRNAは、たんぱく質になる読み取り枠の部分と、そうならない、読まれない部分がある。
非翻訳部分3’UTRが重要です。miRNA,は、20塩基から25塩基くらいの短いRNAで、これが3’UTRというところに直接相補性を持って張り付いて、そのmRNAの働きを抑制する。読み取り枠からたんぱく質が読み取られる過程を抑制したり、或いはこのRNA自身を分解するってことが分かってきました。
脊椎動物のゲノムは数百種類から千種類あるといわれてますが、2万2千くらいある遺伝子のうち、3割くらいの遺伝子がmiRNAを制御する。
一つのmiRNAが多数のmRNAを制御する。逆に一つのmRNAから見ると、多数のmiRNAによっていろんな制御を受けている場合が結構あると。
そういう意味でネットワークになっている。発生・分化、いろんなことに関わっている。
miRNAは、その一番端が一番重要です。
7塩基くらいの最初の部分がすごく重要で、この部分を利用して、はりつく。逆にいうと、わずか7塩基ではりつく位置を決めているということなので、すごい複雑なことがおこっていると。
miRNAがどうやって抑制しているかっていうと、メカニズム的にはまだよく分かっていない部分が多い。
胚発生のタイミングをはかっていたり、ゼブラフィッシュの脳の形態、いろんなことをやっていることが分かっている。でもこれは明らかに氷山の一角にすぎない。 いろんな性質のものがそれぞれのmiRNAごとにあるだろう。
われわれゼブラフィッシュっていうメダカみたいな魚を使って、いろんな突然変異体をとるっていうことが行っている。例えば心臓が作られない変異体とか。
この魚は身体が透明なので、中でどんなことが起きているかみたりするのにも適当なんです。
これ魚ですけど、人に還元できるような一般的なメカニズムを調べる上でも有効です。

話戻りますけど、miRNAが出来てくる過程にはいくつかの酵素が働いている。
ステムループっていう長い状態のものを2段階位で切断して、最終的に2本鎖のmiRNAにして、このうちの一本鎖だけが巨大な複合体にくみこまれて、mRNAにくっついて、翻訳をおこなう。
で、ここにはたらくdicerっていう酵素がある。この酵素が働かなければ、機能的なmiRNAができてこない。ゼブラフィッシュでは、dicerという遺伝子は一種類しか存在しないことが分かっている。逆にいえば、dicerが働かないものを作ることができる。
じっさいこのdicerがはたらかなくなっている変異体も存在する。
技術的なことは色々あるんですけれども、結論から言うと、発生過程の全ての時期において、このdicerというタンパクが働かない状態にした変異体では、いろんな発生異常が起きてすぐに死んでしまう。
実際これはアメリカのグループが最初に示したんですけれども、dicerが全くなくて、miRNAがまったくないと、いろんな変なことがおこってくる。脳の形態形成が全くでたらめになったりする。心臓や、筋肉・骨の元となっている部分、こういうところもきちんとできないというような様々な異常が起きる。
ゼブラフィッシュのmiRNAの430番というものを大量につくっといてやると、異常の大部分が回復して、特に脳の構造がほとんど回復する。
逆に言うと、miR-430が脳構造の形態形成に必須のmiRNAだということが分かる。 で、いまいったmiR-430というのは初期胚の早い段階から発現する、もっとも豊富に存在するmiRNAで、どの細胞にも大量に存在しているって言うことが分かっている。脳にだけあるわけではなくて身体全体にある。
miR-430はいろんな初期発生に非常に重要だ。じゃあどんな標的mRNAに働きかけて制御してるんだろうか。
miRNAの標的mRNAを調べる方法には、一つにはコンピュータで、さっき言ったような7塩基配列をもったmRNAをかたっぱしからデータベース上からとってくるということもできるんですけれども、もうちょっと実験的にきちんとそのものを見分けていくっていうことがもちろん大切。
われわれの実験のきっかけですが、miRNAの標的になるような配列だけを、蛍光を発するたんぱく質をコードする読み取り枠につけたようなmRNAを用意してやって、これを受精卵にいれたら、miRNAが存在する卵の中では、このmRNAがどんどん分解していくんですけれども、miRNAがない卵の中では、このmRNAが安定に存在するというのが分かったというのが、まず第一。
つまり、miRNAはここにはりつくことでこのRNAが分解されてくる。標的の配列が分解されていく。
それを利用して、ゼブラフィッシュでは野生型、dicer変異体と、そこにmiR-430を戻したやつ。こういう三種類の卵を用意する。
この卵の中ではmiRNAは、野生型にはあるけど、dicer変異体にはない。miR-430を戻した卵にはある。
で、その標的となるようなmRNAをプロファイルします。miR-430があればmRNAはどんどん分解されて少量しか存在しなくなる、dicer変異体には、miR-430がないので、こいつは安定に存在しうる。miR-430だけを戻してやると、これは標的mRNAなので、miR-430によって分解されてmRNAは少量しか存在しなくなる。
こういうのを網羅的に追っていきましょう、って言うのが仕事です。

遺伝子基盤に、遺伝配列の一部分をプロットする。そこにそれぞれの卵からとってきたmRNAを蛍光表示して、ここにまぶしてやると、それぞれのmRNAの量というのが完全に網羅的にわかる。
たとえば、ある一つの遺伝子のスポットはすこし紫色になってます。野生型の卵には大量に存在して、dicer変異体にはない、というようなことが一目で分かる。
miRNAでたくさん調べる。今回やったのは、miRNAで1万2千個の配列をもとに、実験を開始した。一万2千個の中で、さっきいったようなプロファイルで、mRNAの存在量が変わることをしらべると、確実なものとして800個みつけることができました。800個なんですけど、さっきいったようにmiRNAというのは遺伝子配列の一部分だけをプロットしたものなので、mRNAの全体の配列がわかるものは少ないです。実際に、miRNAが標的にするようなUCAの配列が分かるのは、300個くらいです。この300個くらいについて配列情報をサーチしてみると、実際miR-430の配列があるものは200個みつけることができました。一万2千個の中から、200個の有望な候補が見つかった。
でもこれだと、コンピュータで調べるのとあんまり変わらないことなんですね。これをきちんと初期胚の中にもどして、実験をする。それぞれの候補の遺伝子をEFTという蛍光を発するようなタンパクの読み取り枠をつけて、これを受精卵にぶちこむ。 受精卵なんですけれども、miRNAがある野生型と、miRNAがないdicer変異体。 この2つの状況の卵に候補の遺伝子を一つずつ入れていくと、ある候補の場合では、野生型では、発現がまったく抑制されておこらない。だけど、miRNAがないdicer変異体では、どんどん発現できる。
つまり、miRNAが、このUTRを介して、翻訳を抑制、あるいは分解しているということで、この候補が本物だと分かる。こういうふうな感じで、実際200あるうちの数十について我々は調べています。
では、そういう標的mRNAはどういうものなのか。
その前に一つだけ説明しておきたいのは、母性プログラムについてです。
もともと、お母さんの体の中で、卵子が排卵され、そこに精子が入ることで、初期発生が起こる。卵形成の過程のときに、母親のゲノム由来で作られたmRNAやたんぱく質が蓄積していて、その働きだけで、最初の発生過程が営まれている。受精したゲノムからの遺伝子発現は、発生のある過程まで全くおこっていない。で、そういう、母親由来のmRNAやたんぱく質によって営まれるところを母性プログラムといいます。
卵子と精子のゲノムから遺伝子が転写されて行われるプログラムを、結合体型プログラムといいます。
卵割がずーっと起こって3細胞期とか4細胞期とかになって初めてこの受精卵自身の遺伝子発現が始まることが分かっている。
で、こういう母性プログラムで働くメッセンジャーを母性メッセンジャーといいます。
話をもどしまして、miR-430の標的プロファイルを調べますと、ほぼ半数が母性メッセンジャーであると分かった。逆に、母性メッセンジャーということがわかっているデータセットについて、その3’UTRの配列を片っ端から調べていくと、非常に有意に、miR-430の標的配列が存在している。結局、miR-430の標的っていうのは、母性mRNAであるというのが、一つ分かったことです。
で、さっき言ったように、母性プログラム、つまり母親由来のmRNAっていうのは受精後ずーっと働いています。それがやがて、結合体型プログラムに切り替わって、miR-430が、この結合体型プログラムで転写されて、使われるようになる。miR-430ができ始めると、標的である母性型mRNAを分解したり抑制したりすることが始まって、これによって、母性型プログラムから、結合体型プログラムへの移行がスムーズにいく。それで、逆に、miRNAができてこない。蓄えられてた母性型メッセンジャーを分解したり抑制したりすることができずに、いつまでもだらだらと母性プログラムが働き続けてしまうので、結局いろんな悪さをして、発生異常が起こる。 というのが、我々の研究で分かった。
これが一つ大きなポイントなんですが、もう一つは、miRNAによるメカニズムっていうのが、実はよくわかってなかったんですけど、そのメカニズムをある程度明らかにしたよ、ということがあります。
で、これは細かいんですけれども、mRNAの末端には、ポリA鎖という、Aが一杯つながった物体があります。これが長ければ、たくさん翻訳されるし、RNAも安定。短いと、あまり翻訳されないし、RNAも分解されやすくなることが分かっています。 こういうことが、miRNAによってひきおこされているのではないかということを調べた。miRNAがあるときには、標的mRNAのポリA鎖が短いが、miRNAがないときには、長くなる。miRNAを戻すと、また短くなる。
ということで、本当にmiRNAによってひきおこされていることが分かった。
miRNAが標的のmRNAにくっつくと、ここでポリA鎖の短縮化が引き起こされる。
ポリA鎖が短くなるので、このmRNAの翻訳が起こりにくくなる、というのが明らかになった。
母性型プログラムから結合体型プログラムへの移行のところの話をしました。
脳の形態形成の異常とかでも、母性型プログラムの中の何かが悪さをしているのでしょう。
それが何なのかは、これから先明らかにしなければならない。
今実際に、これとはちょっと違うことを論文に出していて、体細胞、つまり個体の器の部分と、次の世代を生む生殖細胞、両者のせめぎあいのところにもmiRNAが働いていることを論文にしました。
あくまで一例としてですが。こんな仕事をしています。
やっぱり、miRNAそれぞれがどういう局面で、はたらいているのか。
それが今みんなが調べようとしてることです。
志村システムバイオロジー的な、あるいは全体を網羅的に抑えるときには、どれとどれが対応するか、これは分かるけど、どういうメカニズムかが分からない。ここは個別にやるしかない。両方のアプローチが必要なんでしょうね。
やっぱりゲノム的なやり方では、ある限界がある。新しいやり方はでてくるけれども、それをつなぎ合わせるのは非常に難しいってことがある。
井上miR-430っていうものを見ていくと、他のmiRNAの配列があるんですね。で、そういうのはできるだけ別の制御がかかってるので、まあこういう複雑に絡み合ったネットワークのひとつひとつを見ていくっていうのはすごく大変です。
学生200個というのはすごい数だと思うんですが、大変じゃないんですか?
井上203個全部やったわけじゃないんだよね。でも数十個はやりました。それは、手でインジェクション実験という、卵に向かって打つのをやってて、それが結構大変かな。ただやっぱりmiRNAが全くできない変異体がいるっていうのは1つ大きなメリットだと思います。
志村それはやっぱり原点にあるわけですよね。特定のやつに変異を起こさせる。それを新しいテクノロジーでやれば、非常にクリアに出てくる。
立花そういうのは何人くらいでやるんですか。
井上えっと、これは実際は3つの研究室のコラボレーションです。
志村RNAをゲノムにしているウイルスの中で一番小さいのは、分子量が100万くらいなんですね。ヌクレオチドの数にして大体3000ヌクレオチド。コドンの数にして2000コドンくらいしかないと思われていた。
こういう小さいタンパクがあるっていうことは、遺伝的な突然変異から想像されていたんです。この3つのたんぱく質をまず我々が見つけた。
その合成の仕方を見ると、ウイルスの周りを包む酵素タンパクが、感染後がっと増えるわけです。ところが、他の、RNAを複製する酵素とか、粒子あたり1個しか存在しないタンパクは、少ししか増えないわけです。なんらかの制御機構が働く。
いろいろ研究してわかったことは、非常に巧妙に制御されてるということです。これは翻訳制御なんですね。酵素タンパクが出来ると、他の2つのタンパクの合成を止めちゃうんですよ。
我々が定義したモデルっていうのはこういうことです。
遺伝子の上に、酵素タンパクと、合成酵素が並んでいるのですが、酵素タンパクがその2つの遺伝子の翻訳を抑制してしまう、というモデルを出したんですね。
一方、RNAをGのところで切る酵素があるんですが、それを使うと、一箇所にすることができるんですよ。
こうやって遺伝子の物理的距離を決めていったわけです。
この実験が足がかりになった。1978年にDNAウイルスで、制限酵素を見つけて、ノーベル賞を取った人がいますが、私はこの人の研究室にいたわけですね。
で、ノンコーディングのことでちょっと1つ。今から40年位前ですかね、大腸菌なんですが、tRNAができない突然変異をとったわけですね。そして見たらば、tRNAは何一つできないで、変な分子がいっぱいたまるんですよ。この変な分子は、tRNAの前駆体以外のRNAもたくさんあって、今で言うncRNAです。
これは何かっていうことに関して色々調べたんですが、当時のテクニックがあまりよくなかった。
当時のテクニックではDNAの解析のテクニックはなかったわけですから、RNAで調べたんです。そうすると、tRNA前駆体は、7つのtRNAが、1つのユニットとして作られたものだとわかった。
今で言えばノンコーディングというものなんです。この概念は昔からずっとあったわけですね。
で、RNAの配列を我々が決めたんですけども、DNAで決めたんじゃなくてRNAで決めたんです。これは非常に大変だった。
この中で、RNAがRNAを切る酵素活性を持っている部分はどこか、触媒活性を持っている部分がどこか、そういう細かいところを見つけていったわけです。
立花同じRNAなのに競争相手として妨害しちゃうわけですか?
志村ああ、そうです。この妨害というのは特殊で、うちに今新しく来た井上君は、大学院生のときに、大変いい仕事をしました。
ショウジョウバエの体細胞において、性がどうやって決定されるかっていうものです。初期の3つの遺伝子が関与しているんですけれども、それは選択的スプライシングで決まるというメカニズムを、世界に先駆けて明らかにした。
X染色体とY染色体の比率で性が決まりますね。その比率が1のときはメスになり、0.5のときはオスになる。それが全部、選択的スプライシングで決まるということですね。
オスの場合は全ての部位でスプライシングが起こるんですが、メスでは途中を飛ばすわけです。
ところがこの、メスが飛ばしている部位には、ストップの信号があって、タンパク合成がここで止まっちゃうわけですね。メスではそのストップがなくなるから、たんぱく合成が続くわけです。
これは負の制御なんです。
メスに、あるタンパクがつくと、スプライシングを抑えてしまう。
これは逆に、メスのdoublesexという遺伝子なんですけれども、それまで、普通は行かなかった3と4の間のスプライシングが行われるようになる。これは正の制御。
選択的スプライシングには負の制御と正の制御があるということを示したんですね。 ところが、私がこれをやったときにはまだ、ヒトのゲノムが全部よまれてないときで、ヒトの遺伝子はさっきも言ったように、大体2万2千の遺伝子に、タンパクをコードする遺伝子があると言われているわけですけどね。
タンパク質が30万個もあるわけで、ずっと桁が違うわけですね。何で少ない遺伝子の数から大きいタンパクができるかというのは、選択的スプライシングによるのではないかということがはっきりしたわけです。これは、井上君が院生のときに中心になってやりました。井上さんはそういう大変すばらしい研究をしたんです。

研究費

立花先ほど、省庁が率先してやりたがるっておっしゃってましたが、どの省庁なんですか?経済産業省とか厚生労働省とかですか?
志村厚生労働省はまだ金出してませんね。あそこはいつも遅いんですね(笑)だけどそのうち出すでしょう。変ですね、1つの省庁が金出すとみんな競って出すようになるんです。
私がやってた頃はもう全然お金なんてなかった。私が、RNA研究ということで、科学研究費補助金を取ったんですね。
審査員が顔を見せると、胡散臭そうな顔をしてましたよ(笑)まあ仕方なしにくれたんじゃないですかね。
今はもう、どこが出所か知りませんけれども、RNA研究をサポートするようにという指令が省庁に出たようですね。
立花あーそうなんですか。それはどういうところから?
志村わからない。政治家か、何かもっと上からきたんでしょう。
立花今度の大きなプロジェクトは、研究者は何人規模くらいを考えているんですか?
井上コアになっている計画研究は11人。で、そこに公募研究で50人とることを考えているんで、まあ60人ちょいくらいですね。
志村私自身が研究してたときはいっさいお金をもらわなかったんですけども、今から二十何年か前、グループ研究費を取ったわけですね。
それでRNA研究の輪が日本に広がっていって、学会が出来るくらいの大きさになったわけです。
しかもちょうどそれに合わしたように多彩なRNAの機能がはっきりしてきました。今度はもう上のほうから、むしろやってくれという時代になって(笑)今の人は恵まれてますね。
立花それは植物の世界でも同じなんですか?
志村ええ。もうあらゆる生物でそうですね。
井上はい。例えばその植物のホルモンの生合成過程をmiRNAがしていたりとか。いろんな生理現象もそうですし、発生、分化もそうですし、ウイルスに対する抵抗性とかもそうです。

分子遺伝学の研究 -志村機構長

志村私、シロイヌナズナを用いた植物の器官形成と成長について分子遺伝学研究始めましたでしょ。岡崎国立共同研究機構・基礎生物学研究所の客員研究部門にいたときに。
それで最初に考えた題目はですね、形が何で決まるかっていう問題が1つ。それからもう1つは、植物が外界の刺激にどういう風に応答をしていくかっていう問題だったわけですね。
この2つの問題で、形は花を使ったわけです。1つの遺伝子の変異で、ある器官が全く別の器官に変わってしまうようなものが、たくさん出揃ったわけですね。非常に、鮮烈なデビューをしたんです。
形態形成とかにも、やっぱりncRNAがいろんな形で絡んでいるに違いないんですね。それが明らかになります。
やっぱり、RNAは非常に特異的にタンパクとも結合できます。それはなぜかっていうと、高次構造によって、配列+αの識別部位を持つようになるからです。一本のRNAがたたまれて、部分的に2本鎖を作るわけですね。あるいはさらにそれが折りたたまれて3次元の構造を作る。この高次構造が、RNAとタンパク質との特異性を考えるときに、非常にキーになるわけですね。
ところが、核酸と核酸のただのインタラクションに関して言えば、その配列に特異的なRNA、配列、塩基配列と相補的な配列ということで非常にがっちりとした特異性が出てくる。特定の核酸分子と対合を組むから。そういうことで、特異性を出すのに非常に便利なんです。で、同時にタンパクの特異性もあるということで、RNAっていうのはレギュレーターとして非常に優れた機能を元々持っているわけです。DNAではなかなかこんなわけにはいきません。
立花RNAには安定性は一応あるんですか?
志村安定性はDNAに比べると弱いですね。DNAももちろんDNA分解酵素によって切られますし、あるいはアルカリ性にすると2本鎖が1本鎖になる、とかそういうことはあるんですけども、RNAの場合には、アルカリ性になったときには分子がバラバラになっちゃうわけです。糸そのものがもう、なくなっちゃうわけですね。
mRNAっていうのは最初、こういうものがあるはずだと言って、さっきのジャコブとモノーという人たちが言い出したんです。非常に短寿命のRNAがあるといって予想したんですね。そしたらまさにmRNAだったんです。RNAは寿命が短かったからこそメッセンジャーとして良かったわけですね。

レクチャー第1回 おわり


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