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社会と教育を変えるには

今日ここには学生さんが多いので、こういう運動に入ってみようかなと思う人も多いと思います。それには、大学の時代だけでおわりになるようなのも、一つのやりかたです。そこで勉強して、外にでて違うことをやる。でも、長期にわたって、これってどういう意味があるのかなって考えて、その意味を自分の生き方の中に位置づけてやると、ぶれない。持続できる。僕はそうしないと自分でやってこれなかった。ちょっと面白そうというんで入っても、結局は大変なんですよね。大変さに負けちゃう。だから、この運動に意味を見つけて、かなり大変なときでもやってみたいと思うようなものにいくといいんじゃないかな。

で、このとき、ちょっと矛盾してるように見えるんですけど、自分のためにやっていても、それが必ず社会に役に立つっていう見通しをもつことが大事です。例えば、豊かになっても、それは自己実現にはならないんです。自分が社会の中にちゃんと貢献できているという自覚がなければ。貢献できるように、自分を育てていく。例えば僕が今新聞社の人に、今度こういうのを是非記事にしてくださいと頼むときに、僕のために記事にしてくださいなんて恥ずかしくていえない。でも、僕がでることがあっても、記事で社会が変わっていくと思えば、そのときは言えるんですよね。 今の社会をよくしたいと思えばこそ僕らは動けるんです。


人から情報を得る

東大に入学しちゃうと、社会の中で弱い位置にいる人とか、いろんな人との付き合いってなかなか難しいかもわからない。 僕は東大ではないところからスタートして、自分で考えて前で進むことしかできなかったから、逆にいろんな人とつきあうこともできた。みなさんの場合にはほんとにいろんな人とつきあってみないといけないんじゃないかなと思います。 苦労してる人ほど、いろんな情報をもってる。その人の情報をベースにうごく。 それを工夫してもらいたいなと思います。


社会を下から変える

社会全体を変えるとき、国のありかたを変える、上から変えていくっていうのは、やりやすい面もあるんですけど、ほんとに変わっていくのは、下からだと思います。どうやって下の運動を作っていくのか、それを自分でプログラムしていく、それが社会をよくしていくことにつながると思います。それから、 今大学で学んでいることとこれから外でやることの接点は、大学の勉強がベースになる。僕はずーっと、大学から今まで、去年にもどりたくない、こんなに学んだのに、またゼロからやりたくないって思ってた。学ぶことによって、武器ができる。僕は、今、自分の武器っていうのは、実験の開発をする、ほんとに楽しいなと思ってもらえるようなものを提供できることだと思う。 やなやつだと思ってる政治家がいても、そう簡単にはつぶせないですよ。政治運動だと、つぶそうと思ったら、つぶせる状況があるかもしれませんけど、楽しさを広めようとしているのを簡単にはつぶせない。その武器があるから、社会的にもとりあげられて、いろんなことに広がっていくんです。


学ぶ方法論を身につけろ

僕はドクターとって感じたんですけど、ドクターとると、学会の理事にしてもらえたりするんです。チャンスをもらうっていう点ではね、地位ってのは役に立つ。でも、それで何もしなかったら、そこでおわり。

やっぱり、いいものをつくりあげるには、中身がすごく大切で、そのために自分はこれからどういうふうに生きていって、自分をどうやって高めていくのか、そういうのを考えていく必要があるんじゃないか。そのために、自分の学ぶ方法論っていうのを今一度考える。この大学で、いったい誰に何を学んでいくのか。優れた人はいるんです。そこから学びとるにはどうすればいいのか。向こうから教えてくれるっていうのはないと思ったほうがいい。大学の講義でもそういうことはあんまりしない。東大の教養学部は、本来はそれが任務なんですよね。知識を伝えることではなくて、人生を通じて武器になるような考え方とか方法論をここで学んでほしい。

学んでほしいんだけれども、誰が学べるようになるかっていうのは、自分で作らないとだめなんですよ。僕は、大学のときに、自分の学ぶ方法論つくりましたけど、みなさんはみなさんなりに作っていく必要があるんじゃないか。で、その学ぶ方法論は、一人では学べない。たくさんの人と一緒に学んでいったほうが、ずっと効果的だし、長続きする。というのが僕の思うとこです。サークルを作るとかですね。世の中で人と切磋琢磨する、でも、サークルは、自分のために作る。人が自分に教えてくれるように作る。そういうしっかりした仲間がまわりにいれば、必ず自分は成長できる。身の回りにいる仲間をみなおして、あいつとならやっていけるな、自分がのびていけるな、そういう仲間を今探してもらいたい。

その中で大学の中にかかわらず、いろんないいことをやってると思う人のところにいって、外から眺めるんじゃなくて、その人と話して交流してつかんでいく。そういうことが必要なんじゃないかなと思います。 これはある面では、学ぶということにもつながります。自分のテーマを持って、人と会い、何かを学ぶとっていく。


最後に

ガリレオ工房は、今社会的にはある程度評価される立場にありますが、組織としてみると結構弱体です。ちょっとずつ改善されてはいますが、ホームページが更新されない、通信が送れてでるなど様々な問題を抱えています。

でも、僕はガリレオ工房は面白い組織だと思うんです。実験が毎月たくさんあることもそうですが、それだけじゃない。

ガリレオ工房は、こんなふうに使えると思うんです。もし科学のジャンルじゃない人が、科学の分野に入ってきて、ゼロから運動をつくっていくのはすごい大変ですよね。そういう人がガリレオ工房の運動を使ってNPO、ボランティアの組織はいったいどうやったら活性化するか、というのを研究して彼らのリーダーシップをとることができる。あるいは国の政治を彼らがやりやすいように変えていくことができる。そういう研究のためにガリレオ工房が役立つのではないか、ということです。

「理科カリキュラムを考える会」というのがあります。これはね、ガリレオ工房が社会に出て、学校教育の中で議論するのがものすごく難しくなったため、全く独立した組織としてできたんです。日本のカリキュラムを変える運動を作ろうというので作ったんですね。刈谷市や野田市など、自分の地域ですごくいい教育をしようとがんばってるところをさらに別のところで支援して、日本の教育の新しい動きを作ろうというのでやっています。

それからwikipediaの教育版を作り始めた。ホームページを作って、本来どんなことが教えられるべきか、それにはどんな実験が必要か、子供ってどんな認識をしてるのか、どんな集まりが効果的なのか、そういうのをみんなで書き込んでいく。そして最終的には、授業を行く前にそこを見ると、あ、これなら自分でも授業できる、って思うようなものをweb上で作りあげていこうという運動を始めています。

今日はほとんど概論で、じゃあ具体的にどうやったら探求できるかとか、ボランティアには何が必要かっていう話はしてないんですけど、たぶん皆さんが科学教育活動に踏み込む一歩になるところをちょっとだけ紹介したということになります。

ずいぶん長い時間で大変だったと思いますけれども、ありがとうございました。


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