磁気閉じ込め核融合
磁気閉じ込め核融合の要件
- 高温のプラズマ状態を作り出し、(「中心イオン温度」が高い)
- プラズマ状態で活発な粒子を発散させず閉じ込め続け、(「閉じ込め時間」が長い)
- 粒子同士が衝突、融合できる密度が高い状態に保つ(「中心イオン密度」が濃い)
─磁気核融合で発電するためには、これらの三点セットが不可欠です。
「中心イオン温度」「閉じ込め時間」「中心イオン密度」という三つの数を掛け算した値は「三重積」と呼ばれ、すでに、実用的な核融合炉を作るために必要な三重積の値が算出されています。
右の図は、横軸が「中心イオン温度」、縦軸が「閉じ込め時間」と「中心イオン密度」の積です。このグラフで水色で示された領域より右上にポイントできる炉が、必要な三重積の値を満たす、実用的な核融合炉ということになります。なお、資料が少し古いこともあって核融合研のLHDは載っていません。
さて、高温を作り出すには加熱するための強力な装置が必要で、高密度なプラズマを保つには優れた磁石が必要です。
加熱するための強力な装置
ふだん私たちは、温水が欲しいとき、水を火にかけるか、熱いお湯を注いで混ぜます。同じように、プラズマをあたためるには、プラズマとは別のものに頼る方法と、プラズマを成している粒子のうちもっと熱いものを打ち込んで混ぜる方法が考えられます。
高周波加熱技術
一つ目の方法は、あたためたいプラズマそのものには触れず、マイクロ波(電磁波)を照射します。いわば強力な電子レンジです。太陽光を浴びたアスファルトはとても熱くなりますよね。太陽光も電磁波の一種なので、同じ原理でプラズマをあたためることができるのです。
この方法を研究している佐藤元泰さんの工房には、家庭用の電子レンジ(500W)の5倍の強さを持つ照射機が7台設置されており、1つの窯に接続されています。単純計算でふつうの電子レンジの35倍、お弁当が一瞬で温まりそうです。実際、お弁当には使えませんが、用途は核融合のみに限られません。
佐藤さんは、第二部の最後で「核融合から21世紀の産業技術へ」と題して講演されます。核融合のために開発された技術が本来の目的を越えて他分野にも応用されていく、いわゆるスピンオフが目指す先を聞くことができるはずです。
中性粒子入射技術
二つ目の方法では、ものすごく加速した粒子(ペレット)をプラズマに放り込みます。磁気核融合ではプラズマを閉じ込めるために磁力を使っているので、粒子が電荷を持っていてはきちんとプラズマ内に入ってくれません。電荷を持たない中性のペレットを放り込むことになるのですが、中性粒子を強力に加速する方法は見つかっていません。まず荷電粒子(イオン)を電圧をかけて加速し、加速した粒子を中性化して入射する─という一見遠回りな方法を使うことになります。
加速されたイオンは目にも留まらぬ速さで運動しているため、全てを中性化して入射できるわけではありません。とくに、イオンが正の電荷を持っていると、イオンの速度を上げれば上げるほど中性化の効率が劇的に落ちます。ペレットがほとんどできず使い物にならないことが分かっているのです。そこで、負イオンを利用した中性粒子入射(Neutral Beam Injection)が研究されています。第二部「一億度にプラズマを加熱する」で、研究にあたっている竹入康彦さんが講演されます。
ちょっと一息
図版がなくてなかなか読みづらいページだったかもしれません。申し訳ないです。
後日更新すると思いますので、そのときをお待ちください。
準備中