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「科学は見る時代から見えないものを観る時代へ」
「位相差電子顕微鏡で見えてきた生き物のナノ世界」 永山 國昭
|電子顕微鏡|透過電子顕微鏡|走査電子顕微鏡|
|位相差電子顕微鏡|波の位相|位相板|透明物質|
|ゼルニケ位相差法|微分干渉法|ヒルベルト微分法|
|電子波|染色|包埋|電磁シールドと無帯電位相板|
|in vivo|in vitro|Q dot|

以下の用語解説は、講演者の永山教授に書いていただきました。

電子顕微鏡(でんしけんびきょう)

可視光線よりも波長の短い電子線を用いて分解能を高めた顕微鏡。大きく分けて透過型顕微鏡と走査型顕微鏡の2種類に分けられる。
透過電子顕微鏡(とうかでんしけんびきょう)

試料を完全に透過した電子につき、その波としての性質を用いて拡大像を観察する電子顕微鏡。
走査電子顕微鏡(そうさでんしけんびきょう)

電子と試料中の原子の衝突で生み出される2次電子、反射電子を集めて観察像を作る手法。電子線をナノメートルに絞り試料上を走査し、2次電子/反射電子強度を画像化する。
位相差電子顕微鏡(いそうさでんしけんびきょう)

従来の電子顕微鏡に一枚の位相版を組み込むことで実現する。位相板は20nm〜60nm厚の非晶質炭素膜であり、これを通常、対物レンズの後ろ側の絞りの入っている所に挿入する。ゼルニケ法の場合、300kV電顕の位相板は30nmぐらいの厚さで、中央部に非常に小さな穴が開いているという、単純な構造をしている。この位相板を帯電せず働かせることに、ほとんど50年近い歳月(1958年金谷報告以来)が費やされた。
波の位相(なみのいそう)

波は振動が空間的に伝わる現象である。振動は周期的に繰り返す現象なので数学的には円運動と等価となる。さらに円運動は時計の針の頂点の動きと同じなので、その位置(座標)は時刻のように表される。この時刻を数学的には位相と呼ぶ。位相の単位は角度でなく時刻的に表す。時刻は円を12等分し30°ごとに1時、2時と表す。それと同じように位相単位は円を2πとし、それの何等分かで表す。たとえば90°は円周の1/4なので2π×1/4=π/2となる。円の一周(1周期)を2πとする理由は円周が円の半径を用いて2π×半径と表されるからである
位相板(いそうばん)

光波や電子波が透明な物質を通るとき、波は強度は変えないが波長を変える。このため再び空気中に出てきたとき位相がズレる。時計のアナロジーでは、波が物質に入ると時間の進み方が変わることに対応する。一定の位相ズレ、たとえばλ/4(位相としてはπ/2)のズレを与えるものをλ/4板という。
透明物質・位相物質(とうめいぶっしつ・いそうぶっしつ)

光波や電子波を強度を変えないで通過させる物質。光の場合、ガラス、水、細胞、電子の場合、1 m以下の厚さの有機物質、100nm以下の厚さの半導体や金属などである。透明物質は強度を変えないが波の位相を変えるので位相物質とも呼ばれる。
ゼルニケ位相差法(ぜるにけいそうさほう)

光学顕微鏡において透明な物質の定量的観察法を最初に実現したのがドイツのゼルニケで1930〜1940年代であった。彼はλ/4板(π/2位相のズレ)の中心に微小の穴をあけ位相差法を完成させた。
微分干渉法(びぶんかんしょうほう)

位相差光学顕微鏡の一種で1950年代に発明された。ノマルスキー法とも呼ばれる。入射光束を2つにわけ物に通過後また合体し、2つの光の干渉を観察する。
ヒルベルト微分法(ひるべるとびぶんほう)

微分干渉法と同等の効果が位相板の適用だけで実現することが示された(永山特許、特開2003-100249、US 674,078B2)。
電子波(でんしは)

電子は粒子だが、量子力学的には波としてもふるまう。従って古典的描像では粒子性と波動性の両方を持つと表現される。量子力学的には、この矛盾は複素場表現で解消される。
染色(せんしょく)

透明物質を光波や電子波で観るためには、透明性をなくし、コントラストをつける必要がある。そのため対象表面を他の物質(光の場合は染料、電子の場合は重金属)でまぶす。これを染色という。
包埋(ほうまい)

生物試料を他の固体物質中に埋め込む作業。生物電顕では伝統的に、試料をエタノールなどで脱水しながら置換し、エタノール中にプラスチック原料を溶かし、熱や紫外線でプラスチック固体を作り包埋する。その後プラスチック包埋試料を薄く切り、染色した。一方、新技術氷包埋では生体内の水が包埋固体となるので何も加える必要も引く必要もない。従って生体は無傷"生"であると考えられる。精子や卵子の冷凍保存と同じ手法である。
電磁シールドと無帯電位相版(でんじしーるどとむたいでんいそうばん)

物質を導電性の物体で覆うと静電場も電磁場も中に浸透できない。これは現在日常的に使われている種々の電磁シールド法の基礎である。逆に物質が静電気や電磁源を持っても物質全体を導電性物質で覆うと外に電場も電磁場も漏れない。すなわち電気を封じ込められる。この性質が無帯電位相板に使われた。
in vivo(イン ビボ)

"生"状態のこと。すなわち生きた生体材料の状態。氷包埋法を用いた無染色電顕のみが生物ナノ世界のin vivo観察を可能とする。特に生物の働きを見るとき、蛋白質そのものをその現場でどこまで"生"で観られるかがin vivo性の指標となる。
in vitro(イン ビトロ)

試験管内状態のこと。すなわち人工的に手を加え取り出された生物材料の状態。プラスチック包埋試料はその代表である。
Q dot(キュー ドット)

カドミウム、亜鉛、セルなどの化合物でできた無機超微粒子は蛍光を発する。しかもサイズにより七色の蛍光剤となる。これが生物、医学の領域で使われ始めた。また電顕用ラベルにも使えることがわかった。

さらに知りたい方へ

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役に立つリンク

*日本顕微鏡学会
*自然科学研究機構岡崎統合バイオサイエンスセンターナノ形態生理研究室
おすすめする本
*電顕入門ガイドブック(日本顕微鏡学会編)


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