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長山先生の講演内容

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長山 好夫
核融合科学研究所教授

第1章 核融合は夢のエネルギー資源

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1.1 核融合とは

 太陽の光と熱の源は水素の核融合反応である。2個の水素の原子核が核融合反応して重水素になり、さらに核融合してヘリウム3,最終的にヘリウム4となることで、核エネルギーを放出し太陽を加熱する。原子核は核力が働く距離に近づくと、軽い原子核の場合は核融合反応を起こす。しかし原子核は正の電荷を持つので原子核同士は反発しあっており、核融合反応が起きるほど近接するのは困難である。原子核間距離(10^-14 m)と原子間距離(10^-10 m)を比較すると、その困難さが分かるだろう。太陽の中心部では、重力によって水素を圧縮、加熱することで核融合反応がおきる。

1.2 核融合エネルギーの資源量

 水の分子は水素の原子2つと酸素原子1つでできているので、地球上には大量の水素がある。これを核融合反応させることができれば、太陽のようにエネルギーを得ることができる。しかし地上で太陽の重力に相当するほどの強力な力は、たとえ強力な電磁力によっても得られない。したがって普通の水素同士の核融合反応はできない。

 核融合炉で予定されている核融合反応を、図1(a)に模式的に示す。比較的核融合反応しやすいのは重水素(D)や三重水素(T)、あるいは月に大量に存在すると言われているヘリウム3(3He)である。重水素の原子核は、一個の陽子(p)と一個の中性子(n)からなる。三重水素の原子核は、一個の陽子と二個の中性子、ヘリウム3は二個の陽子と一個の中性子からなる。これらは核融合反応しやすい。

 それらの核反応をまとめると、
D + T → 4He (3.52MeV) + n (14.1MeV)
D + 3He → 4He (3.67MeV) + p (14.7MeV)
D + D → 3He (0.82MeV) + n (2.45MeV)
D + D → T (1.01MeV) + p (3.03MeV)
となる。

 全てを加えると、
6D → 2 4He +2 p +2 n+43.4 MeV
となる。


図1(a)核融合プラズマでの核融合反応。陽子を(+)で表している。(b)LHDプラズマ。

 重水素核融合炉が実用化した暁の、水の核融合エネルギー資源量を計算しよう。水の0.016%は重水であるから、水1リットル中の重水は0.16gである。重水1molは20gなので、これは0. 008モルである。1モルの分子の数はアボガドロ数(6.02×10^23)である。

 だから、水1リットル中の重水素原子核は、
2×8×10^-3 (モル)× 6.02×10^23(アボガドロ数) = 9.64×10^21(個)
である。

 一方、6個の重水素原子核が核融合反応すると、43.4 MeVのエネルギーを出す。MeVはエネルギーの単位であり、1 eVとは、1.602×10^-19 Jのこと、Mとは10^6のことである。したがって水1リットルの核融合エネルギー量は、
(43.4×10^6 [eV]÷6)×1.602×10^-19 [J/eV]× 9.64×10^21 (個)= 1.1×10^10 [J]
すなわち、11,000 MJとなる。

 石油1リットル中のエネルギー量は約39 MJであるから、水には石油の280倍ものエネルギーが含まれている。つまり、1本のワインは風呂桶1杯の石油と同じカロリーの核融合エネルギー資源である。あるいは、北海道に旅行し、神秘の湖、摩周湖を見たとしよう。摩周湖はたて3 km、横6 km、水深200 mである(参照:http://www.masyuko.or.jp/)。この280倍の量の石油を貯蔵する油田を想像してほしい。核融合エネルギーとはとんでもなく大量のエネルギー資源であることが実感できよう。しかも、比較的クリ−ンであり、地球温暖化問題を起こさない。[1]

 核融合エネルギーを実用化できればエネルギー資源の心配がない。この夢をかなえようと人類はこれまで半世紀以上核融合の研究を続けている。



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