立花隆からの予告
立花ゼミ生による取材同行記
キーワード解説
メニュー
このページの説明
立花隆からの予告
シンポジウムのコンセプト
新着情報
これからの予定
プログラム
講演者の紹介
取材同行記
講演内容の要約
キーワード解説
アーカイブ
会場案内
その他のおしらせ
リンク

主催機関へのリンク

家先生の講演内容

ページ先頭へ↑
家 正則
国立天文台教授・東京大学

すばる望遠鏡(担当:野村)

ページ先頭へ↑

すばるのファーストライト

ページ先頭へ↑

 ファーストライトとは、望遠鏡が、初めて星からの光を受けて最初の観測を行う記念日である。

 成功時の様子を家教授は、このように書いている。

 「コンピュータに北極星の座標を打ち込んで、『スタートします』と号令がかかります。山頂の制御室では20人ほどが、またテレビ回線でつながった三鷹の天文台でも、私ほか数人が、息をのんでモニター画面を見つめています。ほどなく、モニター画面にきわめて明るい星が入ってきました。『やったあ』、大感激の一瞬です。皆、手を取り合って喜び、用意してあった『ファーストライト成功』の垂れ幕を掲げました。」
前出『すばる望遠鏡』より引用

 ここで、面白いエピソードがある。このときに見えていた星が北極星ではなく、そのそばの七等星だったというのだ。こんなに明るく見える星が北極星でないはずがないと、みなが間違えたという。

 すばるのファーストライトは上々で、みなの期待が高まった。

観測装置(詳しい情報は、こちらをご覧ください)

ページ先頭へ↑

 望遠鏡の役目は、宇宙からの光を集めて、一点に集中させることだが、今度は、この光を解読する必要がある。その役目をになっているのが、観測装置である。集めた光を処理してコンピュータに送る。実は、これが相当難しい。

 集めた光の量は膨大で(150テラバイトのヒロのスーパーコンピュータでも一分でいっぱいになるほど)、この膨大な情報量から、必要なものだけを集めるのは至難の業である。

 すばるには、計7個の観測装置と、1個の補助観測装置がついている。近赤外線分光撮像装置 (IRCS)、コロナグラフ撮像装置 (CIAO)などである。

 これらの観測装置と4つの焦点によって、可視光から赤外線までの様々な波長を観測できるようになった。

超高精度すばるを可能にする新技術

ページ先頭へ↑

 さて、以上のようなもろもろの苦労があって、やっと完成したすばるだが、今さらなる星像のシャープさを求めて、次の2大技術が考え出されている。

 補償光学とレーザーガイド星である。望遠鏡の精度を大幅にアップする技術として期待される。

補償光学

 補償光学の原理は1953年にバブコックによって打ち立てられた。1950年代当時は、制御素子などの要素技術がまだ発達していなかったため、実用化されることはなく、この原理は理論に留まっていた。しかし、1990年代に入って技術が十分に発達してくると、天文学者たちによって、補償光学の原理を応用した望遠鏡が世界各地につくられた。

 こうして、補償光学系は、天文学の分野に大きな革新を起こした。

 補償光学装置は、大気ゆらぎによって起こる光波の乱れを抑えることを目的に作られている。大気ゆらぎを波面センサーで測定し、それをちょうど打ち消すように、光路中に置いた形状可変形鏡を変形させる。こうして、観測時の星像のぼやけを一気に解消できた。

補償光学の応用例

 補償光学は、天文学や宇宙産業以外の分野でも様々な応用が考えられている。例えば、大阪大学のレーザー核融合研では、レーザービームをもっとシャープにするために補償光学が利用されている。視神経細胞診断やレーザー手術への応用、レーザー加工など様々な応用が開発中だが、補償光学メガネというものも作られ始めている。これは、水様体と呼ばれる、眼球の中を満たしているゼラチン質のゆらぎが人によって違うことに注目している。その揺らぎを矯正して、個々人にあったメガネを作れるのではないか、という研究である。このメガネが実現すれば、いろいろなものが見えすぎてしまって困るほどだろう。

レーザーガイド星

 補償光学系の応用に加え、レーザーガイド星を夜空に照らしだす技術も開発中である。天体を観測するときは、観測したい天体の近くにある明るい星をガイド星としてゆらぎ補正の参照値を取る必要があるため、そこに望遠鏡を向ける。しかしこれでは、近くに明るいガイド星があるときしか観測できない。そこで、ガイド星を人工的に作ってしまえ、という考えから提案されたのが、レーザーガイド星である。観測したい箇所に向けて、地上にある望遠鏡からピンポイントでレーザーをうち、レーザーガイド星を作る。用いるレーザーは、ナトリウム灯(D線)の波長で光る。このレーザーを上空90kmほどの高度にある、ナトリウムイオン濃度が高い層に照射することで、そこのナトリウムイオンが励起されて光り、レーザーガイド星となるのだ。

 補償光学系とレーザーガイド星の技術によって、解像度がぐんとあがり、遠くの暗すぎて見えなかった天体が続々と見えるようになる。

> > すばるがとらえた美しい天体



ページ先頭へ↑